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岡田育さん「我は、おばさん」インタビュー 蔑称から主体的名乗りへ変換

岡田育さん=Omi Tanaka撮影

 「父母の姉妹」「よその女性」という本来の意味を超え、蔑称に落ちてしまったあの言葉。少女と老婆の間に横たわる長い「中年期」を集合的に指す名称が封じられていることと、女性が加齢を引き受けづらく、「母」以外の社会的役割が見えにくい日本社会の現状には関連があるのではないか――。

 「マダム」などの外来語に頼らず、「まずは日本語の辞書に載っている言葉から、この手に取り戻したい」。加齢を引き受けた女性の主体的な名乗りとして。そう掲げて古今東西の文学や映画を渉猟し、ロールモデルを探すエッセー集だ。

 振り返れば、幼い頃は「オヤジギャルになるよ」と心配され、10代は「コギャル」、大人になっても「アラサー」「負け犬」「こじらせ女子」と次々に新語をあてがわれた。だが流行語はいつか廃れる。「オトナ女子」という自称や「美魔女」といった尊称も、時と共に侮蔑のニュアンスを帯びていく。大元の「おばさん」から負の連鎖を断ち切るべきだと考えた。

 自身も、よその子どもの前などで「おばさんに御用?」などと自称するようにしている。初めは背伸びして使っていたけれど、最近は身になじんできた。「既婚未婚も問われず年齢制限もなく、どんな肩書でも、容姿外見や趣味嗜好(しこう)がバラバラでも、ただ中年女性というだけで連帯できる。私たち全員を包み込む、大きな『傘』のような言葉です」

 編集者を経て、今は物書きをしながらニューヨークで暮らす。米国で今、フェミニズムを担うのは若い世代だ。「私たちの世代が黙認してしまった構造的差別やハラスメントにハッキリと怒りの声を上げているのに励まされる」。彼らに手をさしのべ、世代を超えたシスターフッドを切り結ぶのが使命だと感じる。(文・板垣麻衣子 写真・Omi Tanaka)=朝日新聞2021年8月7日掲載