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現役の歴史小説家7人が語る『燃えよ剣』 「背中押される」「感情さらっと」「僕の壁」

オンラインイベントで『燃えよ剣』の好きな登場人物を聞かれ、「お雪さん」と書いた紙を掲げる今村翔吾さん

 司馬遼太郎の代表作『燃えよ剣』について現役の歴史小説家7人が語り合う読書会が11日、オンラインで有料配信された。文芸春秋の小説雑誌「オール読物」の創刊90周年を記念した特別企画。『燃えよ剣』は新選組副長の土方歳三を主人公にした長編で、10月には岡田准一さん主演で映画公開も予定されている。

 参加したのは天野純希さん、今村翔吾さん、川越宗一さん、木下昌輝さん、澤田瞳子さん、武川佑さん、谷津矢車さんの7人。『燃えよ剣』との出会いや読みどころを語り合った。

 小学6年生の頃に読んだという谷津さんは「マンガ『るろうに剣心』がはやっている時期で、(作者の)和月伸宏さんがお好きだったので、どんな本なんだろうと手に取った。思えば僕が歴史小説家として進むきっかけになった」と振り返った。「一旗揚げてやったるわい、という空気は今も昔も変わらない。これから何かやろうという人たちにとって、背中を押してくれる本だと思う」と話した。

 澤田さんは中学生で初めて読んだという。作中に描かれる人物の多さに触れ、「ほんの一瞬しか出てこないにもかかわらず、感情がさらっと書いてあるところがすごい。幕末という混沌(こんとん)とした時代のなかで、主人公たちだけじゃなくて色んな人たちが生きていたんだということが味わえる作品だと思う」と語った。

 読書会では、それぞれが好きな登場人物の名前を挙げて魅力を語る一幕も。今村さんは土方と恋仲になる「お雪」を挙げ、「この作品は女性と土方との関わりの受け取り方が、読む年によって変わってくる」と指摘。小学6年生で出会ってから「10回以上読んでいると思うんですけど、好きですね。繰り返し読むのに向いていると思います」。

 『燃えよ剣』は1964年の刊行だが、「あの時代がいちばん歴史小説の盛り上がった時代やと思う。僕は少なくとも、壁やと思って挑んでいる作品の一つなんですよ。だから、ここに原点がありつつ、令和の作家と読み比べる楽しみ方もできるんじゃないかなと思います」と語った。

 『燃えよ剣』読書会は12月31日までアーカイブ配信で視聴できる(https://oorusoukan90nen03.peatix.com)。税込み2200円。(山崎聡)=朝日新聞2021年9月15日掲載