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川上弘美さん×ロバート キャンベルさんによる朗読イベント 語と英語で朗読、生まれる情景は

(右)川上弘美さん(左)ロバート キャンベルさん=いずれも早稲田大学提供

 作家の川上弘美さんと、日本文学研究者で早稲田大特命教授のロバート キャンベルさんによる朗読イベントが、早稲田大学国際文学館(通称・村上春樹ライブラリー)で23日に開かれた。ライブラリーの開館記念企画「Authors Alive!~作家に会おう~」の第3回。国際文学館の名にふさわしく、まず川上さんが自作を朗読し、同じ作品をキャンベルさんが英語で読むという形で行われた。

 雑誌「MONKEY」に掲載した掌編を集めた『このあたりの人たち』収録の2作と、英語圏でも川上さんの代表作として知られているという『センセイの鞄(かばん)』の一節を、2人が交互に朗読した。英語の朗読にじっと聴き入っていた川上さんは「何でもない気持ちで書いたことも、翻訳者は一行一行精巧に読んでくれている。翻訳している方は、私よりも私の小説をよく知っていると思います」。キャンベルさんは「(翻訳は)一つ一つ、色をきちんと塗り直していくような作業」と応じた。

 参加者からの「作品が映像化されることについてどう思うか」という質問に、川上さんは「元の小説と違うものをつくってくれる方ならお任せして、あとはもうどうにでもしてほしい」と答えた。「小説と翻訳の関係にも通じる話ですね」とキャンベルさん。川上さんは「翻訳も映像化も創作の一つ。私の小説が器になって、最初の形がなくなってもいいから何かになってくれたらいい」と話した。

 キャンベルさんは終了後の取材に、「川上さんの日本語の残影が残っているうちに読むので、作品固有の情動、情景のようなものが、立体的にイメージを結ぶ感覚があった」と「2カ国語朗読」を振り返った。川上さんは「自分の小説を朗読するのは気恥ずかしいけど、今日は楽しめた。日本語と英語でやったからかもしれません。何か違うものがつくられる感覚があった」と話した。

 「Authors Alive!」は全6回の予定。詳細はウェブサイトで。(柏崎歓)=朝日新聞2021年10月27日掲載