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「オンボロやしきの人形たち」ほか子どもにオススメの3冊 底抜けの明るさで苦難突破

「オンボロやしきの人形たち」

 子どもべやの隅っこに「オンボロやしき」はありました。中に住む人形たちも、古くてみすぼらしいものばかり。でもお上品ぶらず、気立ての良い人形たちでした。持ち主のシンシアが新しい人形の家「ピカピカ城」をもらったときに人目のつかない隅っこに押し込まれてしまったのです。

 家ごと燃やして処分されそうになるなど、度重なる窮地に立たされる人形たちですが、常に快活さを忘れず、その明るさで苦難を乗り越えていきます。

 『小公女』などたくさんの児童文学を紡いだバーネットのささやかで愛らしい物語。人形たちの底抜けの明るさは読み手にも伝染してきます。声を立てて笑わずに読み通すなんて、きっとできっこありません。(フランシス・ホジソン・バーネット作、尾崎愛子訳、平澤朋子絵、徳間書店、税込み1540円、小学校低学年から)【丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん】

「トーマス・マン ショートセレクション 道化者」

 本書には、1929年にノーベル文学賞を受賞した作者の短編が新訳で5話収録されている。孤高の作家といわれるトーマス・マンだが、自身の生い立ちが投影されているという「道化者」には特権階級的な環境で育ちながらも、自尊心を失い自分自身を「不幸せで滑稽」な存在だとし、苦悩する姿が描かれている。それぞれの短編に共通して描かれていることは、時代は違えど悩み多き世代の若者が共感できる内容でもあると感じたので、長編に挑戦する前にまずは気軽に手にとってみてほしい。(トーマス・マン作、木本栄訳、ヨシタケシンスケ絵、理論社、税込み1430円、小学校高学年から)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】

「ちいさなおじさんとおおきな犬」

 小さなおじさんは、みんなからいじめられてひとりぼっち。おじさんが友だち募集の貼り紙を出すと、大きな犬がやってきた。毎日ポケットにクッキーを入れて犬がくるのを待つうち、おじさんは犬と友だちになる。楽しく日々を過ごしているところへ、かわいい女の子が登場し、大きな犬と大の仲良しに。おじさんは、自分が仲間はずれになったと思いこみ、ひとり森をさまよう。スウェーデンの地味な色彩の絵本だが、ユーモラスな絵には味があり、幸せな結末に心がなごむ。(バールブロー・リンドグレン文、エヴァ・エリクソン絵、菱木晃子訳、あすなろ書房、税込み1430円、小学校中学年から)【翻訳家 さくまゆみこさん】=朝日新聞2021年10月30日掲載