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「アジアン・コモンズ」書評 「住みこなし」で広がる可能性

評者: 阿古智子 / 朝⽇新聞掲載:2022年01月29日
アジアン・コモンズ いま考える集住のつながりとデザイン 著者:篠原 聡子 出版社:平凡社 ジャンル:住まい・インテリア

ISBN: 9784582544695
発売⽇: 2021/10/22
サイズ: 19cm/361p

「アジアン・コモンズ」 [著]篠原聡子

 スラム化や住環境の悪化に対処するために供給されたアジアの近代的集合住宅は、一見混沌(こんとん)としているが、独自の秩序がある。
 社会的な関係を育む空間的な資源「コモンズ」の形成を明らかにする本書は、内発的な営みを行う生活空間に仕立てるための住人の建築への関与を「住みこなし」と呼ぶ。
 欧米の支援を受けた台北の民生社区もホーチミンのタンホア団地も、住人の解釈で生活を利するようになってこそ、「アジアン・コモンズ」が成立する。
 アジアの都市から見出(みいだ)した(1)核となる場所(コア)、(2)集団で多目的に使える開けた空間(オープンスペース)、(3)個々人の居場所(スポット)、(4)集団と街の境界(ボーダー)というコモンズを形づくる空間要素が参考になる。
 偶然だが、私も「アジアン・コモンズ」と銘打って、市民ネットワーク設立を計画している。拠点となるスペースにこの四要素を取り入れようと画策中だ。