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持ち出された収蔵品の謎は  「博物館の少女 怪異研究事始め」ほか、子どもにオススメの3冊

「博物館の少女 怪異研究事始め」

 「怪異研究事始め」というサブタイトルにひかれて、いったいどんな怪異が起こるのかわくわくしながら読みはじめた。

 物語の舞台は明治時代初期の上野。ちょうど洋館風の国立博物館が出来て間もなくの頃のおはなし。大阪の古物商の娘として生まれた主人公の花岡イカルは、両親を亡くして文明開化の進む東京へとやってくる。ある時、親戚の娘トヨの用事で上野の博物館を訪れたイカルは、館長に目利きの才を認められ博物館の古蔵で怪異の研究をしている織田賢司の手伝いをすることになる。蔵から持ち出された匣(はこ)をめぐり物語は急にミステリアスな展開になっていく。イカルが研究所の助手として成長していくこれからに目が離せない。入念な時代考証に感服した。(富安陽子著、偕成社、税込み1540円、中学生から)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】

「マイロのスケッチブック」

 マイロは小さな男の子。お姉ちゃんと地下鉄に乗ると、ほかの乗客たちの暮らしを想像して絵に描いていく。でも、大金持ちのぼんぼんかと思った子が自分と同じ目的地に向かうのを見て、見かけと実際の現実は違うかもしれないと思い始める。さっき寂しい独り暮らしだと思ったおじさんには仲良し家族がいるのかも。ウェディングドレスのお姉さんの結婚相手は女の人なのかも。マイロたちが到着したのは刑務所。面会したお母さんにマイロが見せた絵は? 想像力が現実を変えることだってきっとあるよね。(マット・デ・ラ・ペーニャ作、クリスチャン・ロビンソン絵、石津ちひろ訳、鈴木出版、税込み1650円、小学校低学年から)【翻訳家 さくまゆみこさん】

「アブナイこうえん」

 ほうかごスペシャルたんけんたいの妄想ワールド第3弾の舞台は「公園」。今回も、迫りくる巨大隕石(いんせき)を破壊するという危険な任務が課せられる。濃密に描き込まれた宇宙に、子どもたちの遊ぶ公園が溶け込んでいる。その中にふだん見慣れた風景の片鱗(へんりん)を見つけるのは楽しい。どんな場所でも妄想男子たちが集まれば壮大な舞台になる。バカバカしくてエネルギッシュで思わず笑ってしまう。がんばれ、たんけんたい! 子どもたちの守るこの世界の平和がずっと続きますように。(山本孝作、ほるぷ出版、税込み1540円、5歳から)【丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん】=朝日新聞2022年1月29日掲載