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石原まこちん「陰謀論THE3名様Q ~CIAの日常~」 風刺効いた工作員らのゆるい会話

 今日もインターネットにはさまざまな陰謀論が渦巻いている。ネットに流れている時点でそれは陰謀じゃないだろうと思うのだが、そこに“真実”を見出(みいだ)す人々もいる。

 その手の人にとって本書は衝撃の一冊だ。何しろアメリカ合衆国の諜報(ちょうほう)機関CIAの工作員たちが、喫煙所で一服しながら極秘任務についてダベっているのだから!

 何度もリリースされる伝説的バンドのリマスター盤にはサブリミナルメッセージが組み込まれている。宇宙人は人間そっくりでセレブの数%は宇宙人。すべてのメガヒットはCIAの工作による。

 そんなCIA内では常識の話だけでなく、拷問器具メーカーにクレーム電話を入れたり、極秘資料をウーパーイーツの配達員を装って運んだりと、ヒラ工作員の地道な仕事ぶりも描かれる。同期が戦争やテロに関わる重大な工作をバリバリこなしているのに自分は機密文書の黒塗りばかり……なんて愚痴も出る。どこの世界も宮仕えは大変だ。

 作者得意のゆるくてバカバカしい会話劇だが、世情に即したネタは意外と風刺が効いている。しかし、油断してはならない。実は本書もCIAの工作の一環なのだ……と陰謀論者なら言うだろうか。=朝日新聞2022年3月19日掲載