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横溝正史、苦闘の跡 「仮面舞踏会」草稿など、軽井沢で発見

軽井沢で見つかった横溝正史の資料群=二松学舎大学提供

 「獄門島」などのミステリーで知られる横溝正史(1902~81)の新たな資料が軽井沢で見つかったと、「横溝正史旧蔵資料」を所蔵する二松学舎大学が発表した。後期の代表長編「仮面舞踏会」の草稿や最後の長編「悪霊島」のメモなどが含まれており、軽井沢が東京・成城の自宅と共に執筆の拠点だったことがわかるという。

 資料は昨年12月に遺族から寄贈され、同大が調査を進めていた。「仮面舞踏会」の草稿は200字詰め原稿用紙660枚。軽井沢を舞台にした連続殺人を扱った同作は62~63年に「宝石」誌に連載されたが中断、何度にもわたる改稿の末、74年に書き下ろし作品として刊行された。草稿は65年以降のものと思われ、登場人物像などに、連載とも単行本とも異なる記述があり、完成に向けた苦闘の跡がうかがえる。

 ほかに金田一耕助ものの「死仮面」の草稿449枚や「悪霊島」の登場人物一覧などをメモしたノート、お気に入りの言葉「論理の骨格にロマンの肉附(づ)けをし愛情の衣を着せませう」を記した墨書も見つかった。

 横溝は59年に軽井沢に別荘を構え、晩年まで毎年のように夏を過ごした。今回の資料は近くにある娘の別荘に保管されていた。同大の山口直孝教授は「横溝は64年から10年間、新作を発表していなかったが、その間も創作意欲を持ち続けていたことがわかる。『仮面舞踏会』の草稿は完成までの曲折を具体的に知ることができる貴重な資料です」と話す。(野波健祐)=朝日新聞2022年6月1日掲載