「ヤングケアラーってなんだろう」
日本では、金や地位を得るための賃労働が、無償のケア労働と比べ、異様なまでに重んじられている。
澁谷智子『ヤングケアラーってなんだろう』(ちくまプリマー新書・836円)は、そんな社会のひずみを指摘する。「ヤングケアラー」とは、家事や家族の世話をする18歳未満の子どもを指す。ケアの時間が男性の働き方に組み込まれず軽視されてきた日本では、母や祖母がケアを担えなくなったとき、その役割が子どもにまわってくる。その「普通」とは違う状況を周囲に話せない若者が多いという。「しんどいを大人にまかせて、子ども時代を自分のために使って」と、著者は様々な支援について詳細に伝える。中高生にもわかりやすい本書が、一人でも多くの当事者に届くことを願う。
★澁谷智子著 ちくまプリマー新書・836円
『フィンランド 幸せのメソッド』
堀内都喜子『フィンランド 幸せのメソッド』(集英社新書・946円)は、ケアをより大切にする国の最新事情を報告する。父親の平日帰宅時間は、日本は夜遅く、フィンランドは16時台が最多。サンナ・マリン氏が世界最年少34歳で首相に選ばれたように、多くの女性が政治で活躍する。日本との違いにため息がでるが、少子高齢化や不安定雇用など同様の問題もあるという。この2冊は、日本の働き方を再考する一助となるだろう。
★堀内都喜子著 集英社新書・946円=朝日新聞2022年6月18日掲載