『カラー版 へんてこな生き物 世界のふしぎを巡る旅』
今回は生物学関連の本を2点。『カラー版 へんてこな生き物 世界のふしぎを巡る旅』(中公新書ラクレ・1320円)は、多くの優れた科学書を送り出してきた作家・川端裕人氏による一冊。生物の不思議な生態を紹介する本は、これまでにもたくさん出版されている。しかし本書は、著者が世界をめぐって出会ってきた動物たちを、自ら撮りためた写真とともに紹介している点で、類書と一線を画する。それだけにその描写はいきいきとしており、かつ学術的な踏み込みも深い。これだけ手間と時間のかかった本は今どき貴重だ。
★川端裕人著 中公新書ラクレ・1320円
『最小にして人類最大の宿敵 病原体の世界 歴史をも動かすミクロの攻防』
旦部(たんべ)幸博・北川善紀『最小にして人類最大の宿敵 病原体の世界 歴史をも動かすミクロの攻防』(講談社ブルーバックス・1100円)は、ペストから新型コロナに至るまで、人類を苦しめてきた病原体たちの驚くべき生態を描く。これら感染症を防ぐべく、人類は免疫系を発達させ、医療・衛生技術を磨いてきた。しかし病原体たちもこれに対抗し、信じがたいほどの進化を遂げている。感染を広げるために宿主の行動を巧みに操るもの、感染者の体内に十年以上も潜み、次の感染のチャンスをじっと待つものなど、その戦略のしたたかさには舌を巻くほかない。次なるパンデミックに備える「知識のワクチン」として、ぜひ読んでおきたい一冊だ。
★旦部(たんべ)幸博・北川善紀著 講談社ブルーバックス・1100円=朝日新聞2022年9月3日掲載