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「食べること」を分析的な美学の方法で解析した「美味しいとは何か」 杉田俊介が選ぶ新書2点

『「美味(おい)しい」とは何か』

 源河(げんか)亨『「美味(おい)しい」とは何か』(中公新書・902円)は、「高級」な絵画や音楽に比べて「低級」とされがちな「食べること」を分析的な美学の方法で解析する。美味しさを分析するなんて味気ない、と思われるだろうか。しかし可能な限り分析し言語化することで、日々の食の経験はさらに豊かになりうる、と著者は言う。そもそも「味」は「純粋な味覚」だけではなく、視覚や触覚などの多感覚、あるいは様々な知識や情報から複雑に構成される。ソムリエが或(あ)るワインをなぜ「猫のおしっこ」と表現するのか。インスタントラーメンも芸術と言えるのはなぜか。食への興味は尽きない。
★源河(げんか)亨著 中公新書・902円

『射精道』

 泌尿器科専門医で、二〇年近く性教育の普及に努めてきた今井伸の『射精道』(光文社新書・968円)は、新渡戸稲造『武士道』を参照して、正しい陰茎の使い方、射精の訓練、オナニーの解放、そして高い道徳観の必要を唱える。家父長的な精神論の押し付けではない。重要なのは科学と道徳を融合させた実践である。何より女性の同意や主体性、身体を尊重すること。著者の姿勢はリベラル+保守というべきものに見える。男性の性教育は大変遅れており、それが性機能障害や「男」としての自信喪失をもたらしてきた。男性学的にも多事争論されるべき一冊。
★今井伸著 光文社新書・968円=朝日新聞2022年9月24日掲載