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「直立二足歩行の人類史」書評 なぜ生息域が世界に広がったか

評者: 石原安野 / 朝⽇新聞掲載:2022年10月29日
直立二足歩行の人類史 人間を生き残らせた出来の悪い足 著者: 出版社:文藝春秋 ジャンル:生命科学・生物学

ISBN: 9784163915838
発売⽇: 2022/08/10
サイズ: 20cm/437p

なぜ人間だけが二足歩行動物として生き延びたのか。足・足首を専門とする人類学者が、古人類学のレジェンドから現代人の歩き方まで、研究現場を訪ね歩いてたどりついた、「二本足が人…

「直立二足歩行の人類史」 [著]ジェレミー・デシルヴァ

 2022年のノーベル医学生理学賞は、絶滅した人類の遺伝子情報を分析し、人類の進化について大きな発見をしたスバンテ・ペーボ博士に贈られることが決まった。人類の進化の歴史は、新たな化石の発見とテクノロジーによって常に塗り替えられている。それは本書のテーマである人類の直立二足歩行についても同じことだ。
 人類の二足歩行はいつ、どのように始まったのか。現存の動物で最も人類に近いDNAを持つチンパンジーでも、歩き方は人類と大きく異なる。人とチンパンジーの進化の系統が分かれる約600万年前よりはるか以前の1100万年前ごろに木の上で直立二足歩行をしていたとみられるサルの化石が、16年に見つかった。その類人猿の子孫のうち、地上に降りて二足歩行を進化させたものが人類に、木から落ちないよう進化したものがチンパンジーへと進化した、という仮説が引き出される。
 また、人類(ホモ・サピエンス)が属するホモ属に多くの種が存在したようにその祖先であるアウストラロピテクス属にも多くの種が存在した。これら近縁種は同時代のアフリカの異なる環境下で暮らし、直立歩行の仕方さえも少しずつ違っていたという。
 前述のペーボ博士の研究は、ホモ・サピエンスがネアンデルタール人やデニソワ人の遺伝情報の一部を受け継ぎ、種が交じり合っていたことを見いだした。二足歩行においても、人類に行きつくまでには様々な進化の試行錯誤があったはずだ。その結果、長距離移動に適したホモ属が誕生し、すぐに生息域をアフリカ大陸の外に広げた。
 人類の足は遅く、転ぶリスクも大きい。にもかかわらず、世界中にその生息域を広げ繁栄した。なぜだろう。武器を持てるようになったからなのか。足を専門とする古人類学者である著者は言う。それは、歩調を合わせて歩けるようになったからなのだ、と。
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Jeremy DeSilva 米ダートマス大准教授。古人類学者。ボストン科学博物館やミシガン大などを経て現職。