「ヤマザキマリの世界」展では、4歳から現在までのヤマザキマリさんの手による絵画や『テルマエ・ロマエ』を含めた著作の原画、山下達郎の新譜「SOFTLY」ジャケット用に描かれた油彩肖像画の実物などのほか、東京造形大学の学生たちが制作したヤマザキマリ作品に関連する絵画や模型の展示も行われています。
会場の東京造形大学附属美術館とZOKEIギャラリーへは最寄りのJR横浜線相原駅から徒歩15分、東京造形大学のスクールバスに乗ると5分で行けます。
会期は11月26日(土)まで続きますが、11月18日(金)までは第1会場の東京造形大学附属美術館展示室AとB、第2会場のZOKEIギャラリーに分かれており、会期を通して見られるのは第1会場です。
ファン必見の『テルマエ・ロマエ』関連作品がずらり
展示室Aに入って多くの人が真っ先に目を奪われるのは「ヤマザキマリワールドの学堂」と名づけられた絵画でしょう。ルネサンス期の絵画「アテネの学堂」をモデルに学生たちが制作したもので、絵の中の人物一人ひとりがヤマザキマリ作品の登場人物なので、探してみる楽しみがあります。また反対から見ると、同じ絵がモノクロになっています。
また、『テルマエ・ロマエ』関係の作品も展示室Aにあり、原画や手描き原稿、ドローイングだけではなく、漫画の題材となったローマ帝国の浴場を学生が再現した「復元立体模型カラカラ帝浴場」や学生が石膏で制作した『テルマエ・ロマエ』主人公の「ルシウス頭部の立体化」など、『テルマエ・ロマエ』ファン必見の芸術作品が並んでいます。
ほかにも著作『オリンピア・キュクロス』や『プリニウス』(とり・みきさんとの合作漫画)の原画も見られます。
続いて展示室Bへ向かいます。
桐竹勘十郎、山下達郎、立川志の輔。新作は錚々たる面々の肖像画
モザイクアートによる「ヤマザキマリの肖像」が印象的な展示室Bでは、エッセイ漫画を含めたヤマザキマリさんによる数々の書籍の実物と概要を振り返ることができ、雑誌やエッセイに寄稿した挿絵、ヨーロッパを旅した10代のころのスケッチや油彩画などもあります。
幼少期や10代のころに描いた絵日記やスケッチからは、ヤマザキさんが画家を目指すまでの道のりが感じられます。
展示室B最大の見どころは、プレス内覧会の前日までヤマザキマリさんが描いていたという、桐竹勘十郎さん、山下達郎さん、立川志の輔さんの肖像画でしょう。
三人の肖像画の横には、山下達郎さんの新譜「SOFTLY」ジャケット用に描かれた油彩肖像画があります。
大学で肖像画を学び、息子さんが生まれたころから漫画家として生計を立てるようになったヤマザキマリさんは、本展の挨拶で「いつか油彩画を描く画家に戻ると思っています」と話していました。
学生によるインスタレーションやプロジェクション・マッピングも
また、11月18日(金)までは第2会場のZOKEIギャラリーでも展示が行われています。
会場入口の正面から見ると、布とアクリルボードを使った「ヤマザキマリのことば(インスタレーション)」と、奥にある「ヤマザキマリ」の原風景』と名のついたプロジェクション・マッピングが目立ちます。これはヤマザキマリさんの半自伝的作品『ルミとマヤとその周辺』をもとにしたものです。
壁には「ヤマザキマリ年譜」や世界地図にヤマザキマリさんが訪れた写真をつけた「ヤマザキマリ世界地図」があります。これらはすべて教授たちの指導のもと、学生が選び、または制作したものです。
単行本化したエッセイや漫画、そして『ルミとマヤのその周辺』などの原画もZOKEIギャラリーを彩り、ギャラリー前にある『テルマエ・ロマエ』のフォトスポットで記念撮影もできます。
プレス内覧会での挨拶で、ヤマザキマリさんは「本展は私をテーマにしていますが、それを作ったのは学生の皆さんであることを忘れないでいただきたいです」と前置きし、「10代から、絵描きになったら生きていけないぞと言われ続けましたが、不確かな人生の中で絵だけは描き続けてきました」とコメント。時折はさむ笑いで場を和ませながら「絵画や漫画制作は結果より作る工程が楽しかったので、展示を見るのは恥ずかしいですが、充足感をもたらしてくれました。学生さんには自分が制作したものを見てもらえることの充足感を学んでほしいです」と締めくくりました。
その後の質疑応答では、新作の肖像画について聞かれ、3点の肖像画を本展に出した後、家から肖像画がなくなって寂しくなったことを明かしました。
ヤマザキマリさんやヤマザキマリ作品が表現者にもたらしたインスピレーション。どのようなかたちで可視化されているのか、本展を楽しみながらぜひ確かめてみてください。