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平野啓一郎さん、講演でD・キーンさん、寂聴さんしのぶ「日本の近代文学が血の通ったものに感じられた」

平野啓一郎さん=東京都北区

 日本文学研究者ドナルド・キーンの命日「黄犬(キーン)忌」にあたる2月24日、作家の平野啓一郎さんが東京都内で講演し、生前の交流を振り返った。

 2019年に亡くなったドナルド・キーン、一昨年に死去した瀬戸内寂聴とそれぞれ親交があった平野さんは、2人が存命ならともに昨年100歳を迎えていたこと、一方で昨年は森鴎外の没後100年の節目でもあったことに言及。「文学史の上の作家は非常に遠い存在のように感じられるけれど、キーンさんや瀬戸内さんから具体的に話を聞くことで、日本の近代文学が血の通った身近なものに感じられるようになった」と語り、キーンが平野さんに語った三島由紀夫や谷崎潤一郎のさまざまな逸話を紹介した。

 平野さんは、源氏物語に魅了されて日本文学に関心を持ったドナルド・キーンが、その後第2次大戦中に日本兵の日記を分析する仕事を命じられ、これが文学研究者としての日記研究につながったことを改めて振り返った。「貴族文化の象徴のような源氏物語と、市井の人々が生死の極限でつづった日記。両極端の出会いが、キーンさんが日本文学を世界に紹介する上で重要な根源だった」

 この日の会場はキーンが長く暮らした東京都北区のホール。会場には430人がつめかけ、熱心に聴き入った。(柏崎歓)=朝日新聞2023年3月29日掲載