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掟破りのミステリー解説 レイザーラモンRG×「#真相をお話しします」―「#真相」あるある早く言いたい!―

 

――いかがでしたか?『#真相をお話しします』は。

 いやあ、これ止まりませんでしたね。一気に全部読みました。面白過ぎて嫁に「読め」って貸したんで、今日持ってきてないんですよ。それ、ちょっと貸してください。

――嫁に読め……。

 今のは偶然です(笑)。

――本作は5編からなる短篇集です。まず「惨者面談」から振り返ってもらいましょう。舞台は新百合ヶ丘の一軒家。中学受験を控えた子どもの家に家庭教師の営業マンが来るんですよね。

 俺も郊外の一軒家に住んでいて、子どもが受験生なんですよ。だから、「なるほど、こういう営業もあるのか」と興味津々で。普通に「ためになるなぁ」って読んでたら、予想を裏切る展開で、慌ててページ戻りましたよ。他の全作品にも言えるあるあるなんですけど、「#真相、ページ戻りがち」。

――お、さっそく一つ目のあるある出ましたね! たしかに、結末を知ると、張り巡らされていた伏線に気づいて読み返したくなるんですよね。

 俺ね、最初読んだとき、昼間に家の前に生ごみが散らかってるっていう描写に引っかかったんですよ。朝のうちにゴミ回収は来るはずだし、なんでだろって。でもそれもちゃんと伏線になってて――。

――おっと、そこまででお願いします。

 とにかく、少しでも違和感あったら、それは全部理由があるんですよ。「ヤリモク」もそうですよね。

――主人公の中年男性がマッチングアプリで若い女の子を物色する話ですね。

 あそこで、主人公が女の子との待ち合わせにハットを被って現れるんですよね。あの時も、「ハットなんか被るか?」って引っかかったんですよ。それが後になって――。

――ハイ、ストップ!

 ……この仕事、ムズイな(笑)。えーと、あと「ヤリモク」はエロい! 男女のやりとりがリアルで途中まで違う意味でドキドキしました。このリアルさ、作者の結城先生は絶対マッチングアプリやってます! あとね、「パンドラ」は精子提供の話なんですけど、よくこんな詳しく描けるなと思って、先生はたぶん、精子提供もされてます!

――いや、それは……、どうでしょう?

 そのぐらい細部がリアルなんですよ(編集部注:後日、著者の結城さんに確認したところ、マッチングアプリも精子提供も本人の経験ではなく、取材に基づいて書いたそうです)。この「パンドラ」はほかの作品と違って、ほろりとさせられました。ネタバレになっちゃうから、別のことに例えますけど、「結婚してるんだけどすごい好きな人ができちゃって、その人とも子どもを授かってみたい」というような……、いや、全然うまく例えられんな、コレ。

どの短編も「4回、裏切られがち」

――次の作品にいきましょうか(笑)。大学の同級生3人組がリモート飲み会をする「三角奸計」はどうでしたか?

 これ、めちゃくちゃ現代が詰まってますよね。ラッパーのR-指定さんが「3つワードください、それでラップ作ります」ってやってるみたいに、結城先生も「リモート飲み、Uber Eats、マッチングアプリで小説書いてください」って言われたのかなって思いました。

――確かに、Uber Eatsもマッチングアプリもこの作品の重要な要素ですね。

 大学時代のだらだらとした男の友情もリアルで、レンタカーで山道飛ばして事故る思い出話が出てくるんですが、俺もまったく同じ経験があって、「大学生、借りた車でむちゃしがち」ですよね。

――そ、それは「#真相」あるある…??

 あと、「4回、裏切られがち」。どの作品も「こうなるんだろうな」っていうのを4回は裏切ってくるんですよ。あとね、先生はマッチングアプリや浮気に手厳しい。先生は、恋愛は一途であるべきって思ってるんでしょうね。「結城先生、ピュアな幻想抱きがち」。

――おお、いっぱい出ましたね。最後のやつ、先生ディスってます?

 ディスってません(笑)。ただ、どの作品とは言いませんが、浮気って、殺されるほどのことかなとは思いましたね。あ、あと「凶器は刃物がち」も言えますね。

――ピピーッ!そこまで! 話題を変えましょう。「#拡散希望」は日本推理作家協会賞(短編部門)も受賞した、この本の看板となる作品です。

 これはズバリ、××××への警鐘ですよね。

――うう、それはネタバレになっちゃうんで、なにか言い換えられますか?

 えっと、この作品を読んだとき、芸人の○○や△△の顔が浮かびましたね。このままいったら、やがてこういう事件ほんまに起こるよって。

――そのお名前は…。ネタバレ的にはギリOKなんですけど、RGさん的に出して大丈夫ですか?

 いや、やめときましょ。伏字使っておいてください(笑)。

現代の問題に「警鐘鳴らしがち」

――では、もう少し読者に内容が伝わるように、一緒にあらすじを振り返っていきましょう。まず、語り手は離島に暮らす小学6年生の男の子。生活も友達関係もすべて島の中で完結しています。

 ここまでは言っていいでしょうね。

――この男の子、名前がすごく変わってるんですよね。

 そうそう、「チョモランマ」っていう。島にはチョモランマを含め4人しか小学生がいないんですが、他の子の名前もみんな変わってるんですよね。砂鉄っていう男子に、口紅と書いてルージュと読ませる女子。島生まれの凛子だけが普通の名前なんですよ。これ、よくできてるのが、ルージュの前に一回砂鉄を挟んでるんですよ。チョモランマって名前でびっくりして、砂鉄で「まあ、あるかあ」ってなっといてからの「ルージュ」。砂鉄がいるから、ルージュも納得しちゃうんですよね。巧妙やで、ここは。

――読みが鋭い! 凛子以外の3人は、小さいころに島に移住してきたんですよね。みんな、スマホやゲームを禁止されていて……。

 そうそう。チョモランマなんか、毎晩1日の出来事を母親に報告する「報告の時間」があるんですよね。おれ、これふつうにいいなあ、って思いましたよ。自分ちでもやろうかなって。それがまさか……。

――おっと、そこまで。

 でも、子どもの教育も考えて田舎暮らしを選んでる親たちだから、これくらい厳しいのは自然ですよね。そこがまた巧い。この作品って、移住問題への警鐘でもあると思います。マッチングアプリとかリモート飲みとか移住とか、「現代社会の問題に鐘鳴らしがち」。みんな陽キャがやってることじゃないですか。さらにキラキラネームへのディスりも入っていて、「出てくる陽キャを地獄に落としがち」。

――これは言ってもいいのかなあ……(新潮社の担当者の顔を窺いながら)チョモランマの……家の2階には……、開かずの間が……あるんですよね?

 大丈夫じゃないですか? ここでまた1回エロそらしが出てきますからね。チョモが開かずの間をのぞいたら、顔を真っ赤にした寝間着姿のお母さんが出てきて。

――エロそらし! 新しい言葉出てきた(笑)。

「もぞもぞと動き、何かを囁き合っている」って、こんなん絶対そういうことかなって思うでしょ。エロを挟まれると、そっちに気を取られて状況を疑えなくなるんですよ。

――ほんまや。ルージュがチョモの家に来るところもそうですよね。「麦茶のグラスを両手に部屋へ戻ると、彼女は大胆にもベッドに俯せの体勢で寝そべっていた」。めっちゃそらしてきました。

 見事にそらされましたね。「腰まである長い黒髪、無防備に投げ出された両脚」って。エロい、エロい。「#真相、エロそらししがち」。

「あるあるの向こう側」で迎える結末

――あと、これはどうですかね。チョモランマはニュースで見た殺人事件の被害者に、事件当日に声をかけられるんですよね。

 そう! そして、その日以来、島民全員がチョモに対してよそよそしくなる……。

――おっと! ここで新潮社さんからストップかかりました。ここまでとしましょう。いやあ、いっぱい「あるある」出てきてありがたいです。

 設定がリアルやからね。なんで俺のこと知ってんやろ、て何回も思いましたもん。リモート飲みでちょっと音声が遅れて聞こえるとか、家庭教師の営業マンが現役東大生やったら言うこと信じちゃうとか、あるあるにのめり込んでるうちに、予想外の結末に連れていかれる。「#真相」は、「あるあるの向こう側小説」ですね。

――すごい! あるあるマスターのRGさんの言葉だから重みがあります!

 とにかく、全部の作品めちゃくちゃ面白いんで、おすすめします! 嫁に読めって言ったくらい。

――嫁に読め…。そのシンプルなやつ、結構気に入ってたんですね…。

「#真相をお話しします」気になったかたはこちらから!

https://www.shinchosha.co.jp/special/shinso/