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水原紫苑さん歌集「快樂」に迢空賞 「言葉が通じないことがむしろ心地よい」パリ滞在中に作歌

(C)角川文化振興財団

 歌壇の最高峰とされる第57回迢空(ちょうくう)賞(角川文化振興財団主催)の授賞式が4日に開かれ、パリ滞在中に詠んだ歌を盛り込んだ歌集「快樂(けらく)」(短歌研究社)で受賞した水原紫苑(しおん)さん(64)が滞在中を振り返り「ここが私のいる場だと思い、パリを中心に歌を作っていきたい」と抱負を語った。

 水原さんは若い頃に歌人の穂村弘さんに「君の歌は日本語のうまい外国人が作ったみたいだね」と言われた体験を紹介し「日本語がしゃべれるのに、話が通じないことが多い」と語った。若い頃に滞在し、昨年と今春、約3カ月ずつ過ごしたフランスでは、言葉が通じないことがむしろ心地よかったと振り返った。秋から再び渡仏するという。

 選考委員の高野公彦さんは〈水晶の短剣となり五千年待ちつづけたり言の葉の鞘〉という歌を「小説を書くように、一首の世界で一つの物語を描き出している」と解説。こうした非現実的な美的な世界を創造してきた水原さんが、同歌集では社会詠も収め、歌の世界を広げたと評価した。(佐々波幸子)=朝日新聞2023年7月12日掲載