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「論点・ジェンダー史学」刊行 ジェンダーの視点で考える歴史

 ジェンダーの視点から歴史学の論点100項目以上を集成した『論点・ジェンダー史学』が出版された。7月上旬、東京都内の書店で共編著者5人が企画の狙いを語り合った。

 ミネルヴァ書房の「論点」シリーズの一冊。今回は分野や地域、時代を超えた構成が特徴だ。扱ったテーマは女性の政治参加や職業、売買春や芸能界の問題から、オスマン帝国やイスラーム圏における女性の地位や同性愛まで多岐にわたる。

 イギリス近代史が専門の山口みどり・大東文化大教授は「編集会議は約50回。新たな論点が学知を広げるワクワク感を伝えたい」。中国近現代史の石川照子・大妻女子大教授は「現実社会の課題を変革する意識をもつには歴史的視点、学際的・国際的視野が必要」と説いた。イスラーム文化・思想が専門の後藤絵美・東京外国語大助教は、「日本の中東研究でジェンダーの観点は最近まで意識されてこなかった」と意義を強調した。ドイツ近世・近代史の弓削尚子・早稲田大教授は「現代におけるジェンダーの諸問題から歴史をさぐることで歴史観そのものも変わる」。日本近現代史の長志珠絵(おさしずえ)・神戸大教授は高校社会科の新科目、歴史総合を念頭に「暗記ではなく『考える歴史』を学ぶときにこそジェンダーの視点は有効」と話した。(大内悟史)=朝日新聞2023年8月5日掲載