1966年の開場以来、多くの名舞台に彩られてきた現・帝国劇場が2月末、建て替えのため休館した。『帝国劇場アニバーサリーブック NEW HISTORY COMING』(東宝演劇部発行・監修、ぴあ・5990円)は、その59年の歴史を俳優やスタッフの証言、上演年表などで振り返る。
ミュージカルの金字塔「レ・ミゼラブル」の日本初演(1987年)時のメンバーによるトークでは、楽曲の難易度の高さ故に、のどを痛める出演者が続出し「みんなお医者さんのお世話になってた」との苦労話も。行間には、一つの作品を作り上げた同志たちの温かく親密な空気が流れる。
今でこそミュージカルの殿堂の趣が強いが、かつての帝劇では映画スターが主役のセリフ劇や、同時代の劇作家の新作もしばしば上演された。
林与一が振り返る、長谷川一夫や山田五十鈴らとの共演の思い出。三島由紀夫最後の戯曲「癩(らい)王のテラス」に主演した北大路欣也の語る、大作家との巡り合い。どれも戦後の日本演劇史の貴重な一コマだ。(増田愛子)=朝日新聞2025年3月1日掲載
