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雑誌「月刊学校教育相談」 現場に寄り添う事例たっぷり

「学校教育相談」

 この連載を担当して気づいたことのひとつは、世の中には学校教育に関連した雑誌がとてもたくさんあるということだった。

 それだけ問題意識が持たれているジャンルである一方で、一般の書店ではなかなか見かけることがない。一般読者には関心を持たれにくい分野なのだろうか。

 今回取り上げる「月刊学校教育相談」もそのひとつ。タイトルに「相談」と含まれているのが、何やら切羽詰まった状況を想像させる。

 最新号の特集はふたつで《子どもが主体的に動き出す瞬間》と《子ども間のトラブルが、保護者間のトラブルに発展したとき》。後者はたしかに対応が難しそうで、教育者もきっと誰かに相談にのってほしいテーマだろう。

 記事は主に現場の教諭やスクールカウンセラーからの寄稿で構成されている。それぞれの教育者が自分の取り組みや、体験から学んだケースを紹介する内容が多く、読んでみると、普遍的な解決法が提示されているわけではないものの、抽象的な教育論で語られていないぶん、かえって参考になりそうである。

 そもそも教育に普遍的な解があるのかどうかもわからないわけで、きっとこうした事例を積み重ねていくことでしか見えてこない何かがあるにちがいない。

 過去の特集テーマを羅列してみると、どれも現実に即した具体的な問題設定になっていて、学校で何が問題になっているのかが見えてくる。

 たとえばひとつ前の8月号では、《夏休み明けがつらい子》《教師が子どもに「謝る」とき》、さらに遡(さかのぼ)ると《しばしば遅刻する子にどう対応するか》《新年度、子どもを「見る」技術》《一年間の「ありがとう」をどう伝えるか》《信頼関係が築けなかった事例から学ぶ》など、当事者でない私が読んでも、教室の状況がおぼろげながら頭に浮かんでくるようだ。

 連載記事も問題意識が明確だ。《学校で使える“ちょっとした”カウンセリングの知恵》にあった保健所との連携の仕方(最新号)や、《本気のいじめ対応 切り札はこれだ!》で詳述される《喧嘩(けんか)両成敗を主張されたら、四段階のステップでかかわる》方法(8月号)、《学校に行きづらい子をサポート》のトラウマの影響かもしれない場合へのかかわり方(最新号)など興味深く読むことができた。

 一方でどの対処法も個別の状況にどこまで応用可能かわからないところがあり、そういう意味ではもっともっと多くの事例を読みたい気がした。

 教育関連の雑誌は薄いものがほとんどで、ひとつの問題に対して多様な対処法が列挙された分厚い記事があればいいのにと、つい思ってしまうが、現状のように多くの関連雑誌が共存していることで、多様性は担保されているのかもしれない。=朝日新聞2023年9月2日掲載