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ブルーノ・ムナーリ「遠くから見たら島だった」 変哲もない石ころに面白みを見いだす

『遠くから見たら島だった』の表紙。地形の険しい島に見えるのは、実は縦6センチ、横14センチの石ころだという

 絶景の名所や、華やかな電飾の場所。「映えスポット」と呼ばれる場所に、スマホを片手に多くの人が集まる。この本を見るとしかし、道ばたの石ころにも映え要素があるのではないかと思えてくる。

 イタリアのデザイナー・美術家のブルーノ・ムナーリ(1907~98)は、変哲もない石ころに、次々と面白みを見いだす。すべすべの石とざらざらの石を比較してみたり、白い線の入った石をタイプに分けてみたり。

 複数の線の入った石ころに、ちょこちょこっとサルを描けば線の群れは密林に、傘差す人を描けば、激しい雨に見える。さらに険しい地形とモンサンミッシェルのような建物を備えた孤島と見えるものが、実は子どものカモメより小さな石だと明かす。

 この発見と見立ての力がデザイナーにとって大切なのだろう。見習えば、我々の日常も違った表情を見せるに違いない。とはいえ、「石ころだらけの場所ですごすヴァカンスほど、楽しいものはない」といえる境地にたどり着くのは至難の業だと思うけれど。=朝日新聞2024年1月6日掲載