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「ガウディさんとドラゴンの街」ほか子どもにオススメの4冊 美しい教会建設にかける情熱

「ガウディさんとドラゴンの街」

 スペインのバルセロナにサグラダ・ファミリアという教会がある。この教会は、ユニークな形ということでも、1882年に着工したもののいまだに完成していないことでも有名だ。1883年にここの主任建築家になったアントニ・ガウディは、1926年に死去するまで、この教会の建設に精魂を傾けていた。身なりにかまわず変人と言われたが、「世界をもっと美しくしよう」と考えて曲線を多用し、新たなアイデアを次々に実現させていった。

 この絵本は、そのガウディの晩年の暮らしぶりや、教会建設にかける情熱を、味のある絵と文で描いている。またサグラダ・ファミリアだけでなく、今はユネスコ世界遺産に指定されている邸宅や公園など、彼が設計した建造物をあちこちに登場させている。

 「つくりはじめさえすれば、のちの人びとの手でいつかは完成する」「次の世代にひきつがれるごとに輝きがましていく」とガウディが語っていたこの教会は、彼の死後も建設が続けられ、今世紀になって、いよいよ完成も見えてきたようだ。(パウ・エストラダ作、宇野和美訳、教育評論社、1980円、小学校中学年から)【翻訳家 さくまゆみこさん】

「ゆきのゆきちゃん」

 ゆきちゃんはネコだけど、寒い日の散歩も好き。降る「ゆき」を見て、同じ名前をふしぎに思い、自分の名の由来をたずねて回ります。雪みたいにふわっとしてるから。きれいだから。そう言う森の仲間だって、ふわっとしてるしきれいだし。心はしゃぐ銀世界。いっしょなのもうれしくて、どんどん遊びが広がります。「ふわっと ゆきつかみ」や「きれいに ゆきおとし」、なめあったり足跡つけたり雪まみれに。雪の日の素朴なよろこびが、銀のインクを用いた印刷や紙の質感からも、じんじん伝わってきます。(きくちちき作、ミシマ社、2750円、2歳から)【絵本評論家 広松由希子さん】

「ナイチンゲールが歌ってる」

 両親のいないロッティは、おばさんと2人暮らし。母譲りのバレエの才能を開花させてゆく少女の成長の物語。

 人は目標や憧れを手に入れようとすると、どうしてもそこだけを見てしまう。しかし、何かを成し遂げるために大切なことは、この世の中のささやかなものたちに耳をかたむけ、いつくしむことだ。人として生きることの根本をけっして忘れてはならない。

 ナイチンゲールの鳴き声をきくことを意識して生きるだけでちょっとずつ成長できると思うと、なんだか未来が明るく見える。(ルーマー・ゴッデン作、脇明子訳、網中いづる絵、岩波書店、1078円、小学4年生から)【丸善丸の内本店 兼森理恵さん】

どんどんアイデア、「みつごちゃん」続編

©Eiko Kadono Office

 主人公の三つ子は「アーちゃん」「レーちゃん」「マーちゃん」。アーレーマー!と驚くことばかりのにぎやかな1日を描いた絵本「みつごちゃんとびっくりセーター」(童心社)が刊行された。文は角野栄子さん、絵は西巻かなさん。2003年刊「びっくりさんちのみつごちゃん」の続編だ。あわせて1作目も改訂新版が出た。

 角野さんは、「2人で話していると、『こうしたらおもしろいんじゃない?』とどんどんアイデアが出た。自由に、自然にできた本」と話す。

 西巻さんがこだわったのは色使いだ。空のはっきりとした青、セーターの淡くやわらかいピンク。強弱のついた色が、世界を驚きにあふれたものとして描き出す。「角野さんの作品は品がよくて楽しくてきれい。だからこの絵本もカラフルできれいなものにしたかった」と西巻さんは話す。

 角野さんは1月に89歳の誕生日を迎えた。「物語が尽きることはないのね。子ども時代が遠ざかる感覚もない」と語る。「秘訣(ひけつ)はないけど、自由でいなくちゃ。子どものために書こうと思うと自由を失う。自分が楽しい、好き、と思うものじゃないと心が動かないでしょう。何でもね、おもしろければいいのよ」(田中瞳子)=朝日新聞2024年1月27日掲載