2月。プロ野球は、春季キャンプ真っただ中。
我が阪神タイガースは一軍、二軍とも沖縄で汗を流す。
今年の目標は初の連覇。選手、ファンも同じ気持ちだ。
シートノック、守備練習、ランチ特打……画面を通しても、選手たちが丁寧かつ懸命に、練習に取り組んでいるのが伝わってくる。
正式発表されたペナントレースの日程をチェックし、仕事のスケジュール表に書き込む。
仕事の合間に野球観戦or野球観戦優先? もちろん後者だ。
試合の予定は先に決まっているし、大抵の仕事はあとから入ってくるし、結果的に後者になる。
去年緊急入院した時、病床で阪神の試合を観続けた。
阪神の応援をしながら、阪神の活躍に励まされていた。
回復した今年は、さらに熱く応援せねばならない。できれば球場へ足を運びたい。
ところで昨年末、日本一を果たした岡田監督はこうおっしゃった。
「来年(2024年)は何もしない。選手が勝手にやる」
昨年の勝利が選手に自信をもたらしたから、大丈夫だという。
自らを信じると書いて「自信」。
自分の能力、価値を信じること。
自信をつけるのに必要なのは、努力、訓練、天性、実力……あとは何だろう。
24歳の時、デビュー以来所属していた事務所をやめ、フリーになった。
リスキーな道を選んだのは、自分に自信がなかったからだ。
それまで思い悩んでばかりだった。
「どうしてあの子は堂々としているんだろう?」
「なぜこの子はこんなに落ち着いているの?」
自信ありげな同世代の子を見ると、自分が縮んで、小さくなっていく気がした。
もっと努力し、訓練しなければ、足りない天性や実力をカバーできない。
このまま甘えていたらダメになる、あえて自分を窮地に追い込もう。そう考えた末の退所だった。
事務所をやめたと知らせたら、周囲の関係者は波が引くようにいなくなった。
後ろ盾のない私に未来はない、と思われたのだろう。
そういう反応は覚悟していたが、ショックは大きかった。
ヴァージニア・ウルフ『自分ひとりの部屋』は何度も読み返す一冊だ。
1928年にケンブリッジ大学の女子カレッジで行われた講演をもとに書かれた本書冒頭で「女性が小説を書こうと思うなら、お金と自分ひとりの部屋を持たねばならない」と述べている。
ウルフがこう述べたのは約100年前。つまり一世紀前のこと。
家父長制のもとにあるイングランドで、どれほど先進的な意見であっただろう。
ここでいう「お金」とは、自活できること。
もうひとつ「自分ひとりの部屋」とは、実際の部屋というよりも、誰にも侵されない心だ。
そしてこうも書いている。
「わたしたちは幻想を抱く生きものですから、たぶん何にもまして自信が必要です。自信が持てないのであれば、揺りかごの赤ん坊に逆戻りなのです」
ウルフの言葉に、自信がない心がぐらぐらと揺れた。
自信を持たなければ赤ん坊同然。誰かの庇護がなければ生きられないなんて、耐えられない。
自信を持つにはどうすればいい?
自信は、わずかにだが生まれた。私の場合、その源は本。
もともと好きだった本を読むだけでなく、書き始めた。読むことが救いにもなり、励ましにもなった。この連載でも、今の私の素になった本を紹介している。
でも自信はシャボン玉みたいにすぐ割れてしまう。
自信は自家発電だ。すぐに消えてしまうなら、吹き続ける。読み続け、書き続ける。
そうしているうちに、事務所をやめて、25年たった。紆余曲折、右往左往した日々を書けば長くなるので、いつかまた、別の機会に。
「選手が勝手にやる」と言っても、そこは岡田監督。キャンプで選手を見る目は冷静。
紅白戦後、メディアへの一問一答では、選手への愛あるダメだしがさく裂した。
公開説教ともいえる岡田監督の一問一答は、ペナントレースが始まったら触れたい。
昨年の勝利を慢心せず自信に変えて、チームの勝利にとどまらない、ひとりひとりの飛躍への期待が高まる。
いまから開幕戦が待ち遠しくてたまらない!