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「古生物学者と40億年」書評 分からないに挑む情熱

評者: 野矢茂樹 / 朝⽇新聞掲載:2024年06月08日
古生物学者と40億年 (ちくまプリマー新書 455) 著者:泉 賢太郎 出版社:筑摩書房 ジャンル:地球科学・エコロジー

ISBN: 9784480684806
発売⽇: 2024/04/10
サイズ: 17.3×1.6cm/256p

「古生物学者と40億年」 [著]泉賢太郎

 古生物学と聞いて、恐竜が行きかうCG映像を思い浮かべる人は、この本を読んできっとがっかりするだろう。
 こんなすごいことが分かった、ということをひけらかす本ではない。こんなに分からない。こんなに独断的な前提に基づいている。そんなことが書かれている。恐竜の化石から太古のロマンが立ち上がる、ということは書いてないが、ウンチがいかにして化石になるのか、そこから何が分かるのかは書いてある。
 しかし、制約や分からないことが多いほど、研究者は燃える。化石として残されたわずかな情報を最大限活用するため、いま生きている生物を化石目線で見る。アサリのしかじかの形態は、生息していた海底の深度を示している。ならば、化石にその特徴があれば、その古代の貝がどのくらいの深さで生きていたかが推定できる。かくして、古生物学者として、貝やカニを飼育する。恐竜の化石を掘るばかりが古生物学じゃない。
 この本には研究者の情熱が詰まっている。だけど、がっかりさせちゃうかな。どうかな?