「ツペラ ツペラ」という不思議な名前で、ワッと驚くような絵本が話題のすてきな夫婦ユニット。亀山達矢さん、中川敦子さんが新刊「tupera tuperaのアイデアポケット」(ミシマ社)で創作について明かした。こんなに発想のタネあかしをしてしまっていいんですか。
「クリエーティブに日々を楽しく。これまでの仕事の集大成を愉快にまとめています」と亀山さん。
「しろくまのパンツ」「やさいさん」……tupera tuperaが生み出した絵本は約50冊。インパクトのある絵、思わぬ展開で心が弾む。こんな絵本はどうやって作られるのか。2人の頭の中も、技術的なことも見せてしまう。
たとえば、「ワニーニのぼうけん」や「パンダ銭湯」は主人公について考えて物語の世界を広げた。「うんこしりとり」は言葉遊びから。様々なアプローチで作品が生まれていく。紙、のり、はさみ選びも大切だ。手を動かして「こしらえる」イメージだそうだ。
絵本だけではない。展覧会、ロゴ、イベント企画と幅広い仕事の「遊び方」にも話は広がる。そして工作や暮らしの中の遊びへ。2002年に活動を始めて22年、「おもしろい」をキーワードに様々な「新しい」を生み出してきた。
中川さんは言う。「ものを通してだれかとつながったり、コミュニケーションが生まれたり。それが私たちの仕事の一貫したところです。実際の空間でやると展覧会になり、本にとじると絵本になるんです」
お父さんが顔をはめて子どもたちと遊ぶ「パパパネル」など、ふとしたアイデアに見えるが、形にするのは一筋縄ではいかないという。「思いつきで終わらせず、クオリティーを上げていく。もの作りとしては最後までつめないと届かないよ、ということも感じてもらえれば」と中川さん。
中川さんと亀山さんはその時々で柔軟に役割を分担している。「アイデアを違う頭に投げられるのがユニットのよさです。中川はブラッシュアップがうまい」と亀山さんはにこにこ。
文庫サイズの「アイデアポケット」。「絵本のおもしろさを大人に伝えたい。そして、僕らのことをきっかけに頭をやわらかくしてほしい」と亀山さんの言う通り、暮らしにユーモアがあるとはこういうことだと感じられる1冊だ。=朝日新聞2024年12月11日掲載