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本屋大賞、翻訳小説部門に「フォース・ウィング」 発掘部門は「ないもの、あります」

2025年本屋大賞を受賞した阿部暁子さんや他部門の受賞者と書店員ら=吉本美奈子撮影

 9日に発表された本屋大賞では、阿部暁子さんの「カフネ」(講談社)が大賞を受賞したほか、翻訳小説部門と2023年11月以前の刊行作が対象の発掘部門が選ばれた。

 翻訳小説部門は「フォース・ウィング―第四騎竜団の戦姫―」(レベッカ・ヤロス著、原島文世訳、早川書房)に。米国で話題の、ロマンスとファンタジーをかけ合わせた「ロマンタジー」の代表作だ。動画投稿アプリ「TikTok」で人気に火がついた。

 授賞式で原島さんは「とにかくドキドキ、ハラハラさせられて、物語を読む楽しさを存分に味わえる作品」と魅力を語った。

 発掘部門は、01年に単行本が刊行された「ないもの、あります」(クラフト・エヴィング商會〈しょうかい〉著、ちくま文庫)に決まった。「堪忍袋の緒」など、よく耳にするのに見たことがないものを取り寄せて読者に届ける、というコンセプトの本だ。

 推薦者の三省堂書店東京ソラマチ店の安田美重さんは「いつページをめくっても、どこから読んでも、いつも私の心をくすぐってくれる大好きな本です」と同作を紹介。

 クラフト・エヴィング商會の一人、吉田篤弘さんは「単行本が出たのが四半世紀前。こういう本が今も書店に並んでいるということは、ひとえに書店員の皆様のおかげ」と、思いがけない受賞を喜んだ。

 吉田さんは、AI(人工知能)の登場にも言及。「ものすごく色んなことを知っているし、すぐに技術を習得して、とんでもないことをやるので手ごわい」。だが、弱点を見つけたという。「どうもヤツは、心っていうものを持っていない。これこそが究極の『ないもの、あります』なんじゃないか。心というものを大いに活用して、これからも新しいものを作り続けていきたい」(堀越理菜)=朝日新聞2025年4月16日掲載