
詩に興味はある、でも、どう読んだらいいのか、どう書いたらいいのか――。戸惑う人々に扉を開こうと詩の雑誌「詩(し)あ」(パブリック・ブレイン)が創刊された。旬の詩人の作品を紹介するだけでなく、詩作講座の体験リポートや、講師からの助言なども平易に伝える。編集人の南田偵一(なんだていいち)さんは呼びかける。「詩を楽しもう!」
南田さんは学生時代から太宰治に傾倒し、編集プロダクションや社会科学系の出版社を経て、出版社「パブリック・ブレイン」を設立した。自身も詩人で、「詩あ」ではコンテンツの企画・取材・執筆、編集、デザイン、書店営業などをほぼ一人で手掛ける。
「ここ数十年、詩に関しては『楽しむ』という観点が抜けていたかもしれない。発信する側にも、どうせわかってもらえない、という諦めもあった」。その反省から、「詩人と二人三脚で、一般に向けて売る努力、読者・書き手を増やす努力をしたい」として刊行にこぎつけた。
創刊号には、石松佳、杉本真維子、石田諒の各氏や自身も含む8人が、「学校」を共通テーマに詩を寄稿。期せずして親しみやすい形式・長さの詩がそろった。また、詩の講師を務める松下育男さんらに詩を書くこと、教えることについても取材した。
先行する詩誌の代表格は月刊「現代詩手帖(てちょう)」だが、「ここから読むのは、多くの初心者にとって、いきなり激流に飛び込むようなもの。でもステップを踏んで近づいていけば、そんな世界に手が届く人もいるかもしれない」と語る。
根底にあるのは、詩は読み手も書き手も自由である、という考え。「生きづらいと言われるこの時代、詩の心地よさを潜在的に求めている人もいるはず。詩を読むこと、書くことで、主体的で自由な時間を取り戻してほしい。そのきっかけを作れたらうれしいです」
第2号はこの冬、刊行予定だ。(藤崎昭子)=朝日新聞2025年7月9日掲載
