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「恐竜学」/「ジュラシック水族館へようこそ」書評 太古の世界探究するワクワク感

評者: 竹石涼子 / 朝⽇新聞掲載:2025年09月06日
恐竜学 著者:小林 快次 出版社:東京大学出版会 ジャンル:地球科学・エコロジー

ISBN: 9784130602600
発売⽇: 2025/04/25
サイズ: 21×2cm/502p

ジュラシック水族館へようこそ: 日本の化石からわかる海の古代生物 (DOJIN選書:100) 著者:中島 保寿 出版社:化学同人 ジャンル:科学・テクノロジー

ISBN: 9784759821772
発売⽇: 2025/05/19
サイズ: 12.8×18.2cm/228p

「恐竜学」 [編]小林快次/「ジュラシック水族館へようこそ」 [著]中島保寿

 翻訳本ではない。日本人研究者による日本語のオリジナル「恐竜学」が読める時代が到来した。
 執筆チームを率いるのは、国内最大の全身骨格「むかわ竜」発掘でも有名な北海道大の小林快次さんだ。骨の構造、進化、生態系など、最新の成果を幅広く紹介する。
 カナダ、アラスカ、中国、モンゴル。かつて発掘現場の多くは海外だった。日本でも歯の化石などは見つかっていたが、近年、大発見が相次ぐ。
 2000年命名された肉食恐竜フクイラプトル。19年には、むかわ竜が新属新種と認められた。24年には13種類目の非鳥類型恐竜が命名され、日本人研究者も、日本からの成果も増えた。
 本著の第Ⅲ部は、北海道から九州まで、日本で見つかった恐竜化石にまるごと割いている。
 科学的な解析方法が多様化したことも実感できる。CTスキャンのおかげで化石を壊さずに脳や神経の研究が大いに進んだ。羽毛化石に残るメラニン色素から恐竜の色が推定可能になってきた。
 本の内容はやや専門的だ。でも、つまみ食いして読むだけでも面白い。執筆陣が若手主体であるというのも魅力的だ。未来に開けた専門書だと感じる。
 一方、入門書でオススメなのが『ジュラシック水族館へようこそ』だ。こちらは、個の視点から古生物学を見渡す。
 著者の中島保寿さんは、魚竜など海の古生物が専門。学生時代から化石を見つけるのが上手なことで知られていた。達人は海岸線や地層のどこを見ているのか、どこにピンと来るのか。発掘のコツや心得も披露する。
 フィールドノートの取り方、発掘やクリーニングの方法だけでなく、何をもとに当時の状況を考察していくのか。地道だが重要な作業もつぶさに見せてくれる。「古生物学者になるには」という項目もうれしい。
 絶滅してしまった恐竜や魚竜たちを探究する意味とワクワク感を共有できる2冊だ。
    ◇
こばやし・よしつぐ 1971年生まれ。北海道大教授▽なかじま・やすひさ 1981年生まれ。東京都市大准教授。