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河内春人「継体天皇」 複数の王統から始まる皇位

 今年7月に成立した改正皇室典範をめぐる議論では、皇位の継承方法や女性天皇の問題について、国民が高い関心を寄せていることが改めて明らかになった。こうした関心は、天皇という地位が出現した古代で、そもそも天皇とはどのような存在であったのか、その始原を知りたいという関心につながるだろう。

 皇位や皇室についての議論が盛んになる中で刊行された本書は、このような、古代の天皇の実像に向けられた関心に応えるものとして迎えられたのではないか。

 著者は『古事記』や『日本書紀』、中国の史書、さらには考古学の研究成果を読み解きつつ、5世紀までの王家を構成した集団として古市、百舌鳥(もず)、馬見などの勢力を想定する。つまり後の天皇家につながる倭王家は、当初から一つの集団であったのではなく、複数の集団であったとする。5世紀末から6世紀初頭、そこに北陸から台頭した継体天皇の王統が新たに加わり、地方豪族の支持をも取りつけて王統の一本化が実現する。さらに継体は、折からの東アジア情勢の混乱の中で、連合体からの離脱を試みた筑紫君磐井(いわい)の乱を平定したことで統一政権を成立させ、後の天皇につながる事実上の始祖王となる。その後、継体の子供たちがその地位を世襲することで、安定した皇位が実現する、という見通しが示される。

 倭王が複数の王統から選ばれていたという見通しが正しいならば、一部の論客が主張するような、男系による皇位継承が初代天皇以来の伝統とするような見方が成り立たないことは、改めて明らかといえよう。

 近年の古代史研究は、これまでよりもっとラディカルな形で、倭王とそれに続く天皇の歴史のはじまりを議論するようになっている。本書を通じて、そのことが理解されるとうれしい。=朝日新聞2026年9月19日掲載

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 中公新書・1100円。26年5月刊。8刷8万1千部。担当編集者は「継体天皇が古代史の大きな焦点であり続けており、皇室典範改正の論議が高まったこと、ミステリーのように読めることなどから読者が広がっているのでは」という。