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白井智之「少女を殺す100の方法」書評 残酷描写に深いテーマ

評者: 末國善己 / 朝⽇新聞掲載:2018年02月25日
少女を殺す100の方法 著者:白井智之 出版社:光文社 ジャンル:小説・文学

ISBN: 9784334912017
発売⽇: 2018/01/17
サイズ: 19cm/301p

少女を殺す100の方法 [著]白井智之

 白井智之は、全身に人面瘡(そう)ができる奇病が流行した日本など、グロテスクで特殊な設定を活(い)かしたミステリーで注目を集めている。
 著者初の短編集となる本書は、タイトルに偽りなく二十数人の少女が惨殺される5作が収録されている。
 私立の女子中で1クラス全員が射殺され、執拗(しつよう)に顔をつぶされる「少女教室」は、現場の状況から丹念に推理を積み重ねて真相を導き出す終盤が圧巻である。
 巨大なミキサーに入れられた少女たちが、脱出の方法を模索する「少女ミキサー」、金持ちに斡旋(あっせん)され、商品価値がなくなると殺される少女の死体処理をしている男を主人公にした「少女ビデオ 公開版」は、着地点が見えない展開も、周到な伏線から浮かび上がるどんでん返しも鮮やかだ。
 人間の尊厳が奪われた本書の少女たちは、紛争地域で無慈悲に殺されたり、大人の食い物になったりしている現実の少女と重なる。残酷な描写は、深いテーマも秘めているのである。