小さな企業が生き残る [著]金谷勉
日本の企業は実に9割が中小企業。ものづくり大企業が次々と不祥事にまみれる中、「身軽だし小回りも利く」小さな企業こそ出番であるはずだが、現状は大企業の組織疲労以上に厳しい。
背景には、圧倒的な技術を持つ一方で、時代感度やビジネス感覚に遅れている、職人気質のマイナス面がある。
デザイン会社の社長として、そのギャップをつなぎ、経営不振の町工場や工房を立て直してきたのが著者である。眼鏡の加工法を活用して作った耳かき。手編みセーター模様の器。繊細なリボンのしおり……登場する成功事例は、地域の特性を引き出しながら、それぞれに、あっと驚く意外性が宿る。
今の世のデザインとは、商品に意匠を施すことだけでなく、販路まで全体の道筋を設計すること。「商品はつくって終わりではなく、きちんと売って、買い手に届いて初めて商品となる」ということで、小さな会社が生き残るためのキーワードは、「考動(考えて動く)」。
「小さな会社が毎年少しずつでも業績を伸ばしていければ、まだまだ日本は良くなる」と著者はいう。熱意を作り手と分かち合いながら、町工場の再生が進む。=朝日新聞2018年1月21日掲載