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「ウニはすごい バッタもすごい」 なぜこんなに多様な動物が?

ウニはすごい バッタもすごい [著]本川達雄

 本川センセイがまたまたヒットを飛ばしてるらしい。『ゾウの時間 ネズミの時間』がベストセラーとなったのは四半世紀前のことだった。ご本人は、「税金ばっかり取られて、ベストセラーなんて書くもんじゃありません」と、本気とも冗談ともつかない独特の調子で語っておられた。なのに今度は「すごい」話で再びの快進撃。
 売れに売れたとはいえ、『ゾウの時間』は、数式やグラフも多用された硬い本だった。なにしろゾウやネズミのイラストすら入っていないのだ。そして今回も、動物の体のつくり、専門用語でいう体制をグループごとに説明した本であり、とても硬い内容だ。それもそのはず、センセイが東京工業大学時代に行っていた講義をまとめたものだというではないか。
 なのになぜ人気なのか。それはまさにタイトルどおり、「生きもののデザインはこんなにすごい」と語るその説得力にありそうだ。しかも自作の歌付きで。
 動物の体制というのは動物系統学という地味な分野で、高校生物の教科書では後ろのほうに位置し、各自読んでおくように的な扱いをされかねない。
 しかしじつは、なぜこんなにも多様な動物がいるのか、共通の祖先からどうやって進化したのかという大いなる謎に答えるおもしろい分野なのである。
 ただしこの分野、進化の歴史を省いて結果だけを見れば、現在の動物グループの体制は、進化が生み出したすごい適応であるという結果論も成り立つ。現在の体制がいかに合目的かという、アリストテレスが唱えた目的論に通じる説明法だ。実際には祖先から引き継いだ既定路線内での適応であり、理想的な適応ではないのだが。そのあたりのことはとことん承知で謳(うた)い上げている本川センセイ、さすが老練な確信犯である。
 そういえば、センセイの大好きなウニには、アリストテレスの提灯(ちょうちん)と呼ばれる器官もあったっけ。そうか、そもそもがセンセイの自家薬籠(やくろう)中の物なんだ。(渡辺政隆=サイエンスライター)
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 中公新書・907円=9刷5万3千部 17年2月刊行。
 著者は「歌う生物学者」としても知られ、本書には、“ナマコ天国”など、各章にちなんで作詞作曲した七つの歌も載っている。=朝日新聞2017年6月4日掲載