大ヒット作の一方で怪作も少なくない大御所・本宮ひろ志だが、最大の問題作は1982年に「週刊少年ジャンプ」で始めた『やぶれかぶれ』だろう。主人公は『男一匹ガキ大将』や『俺の空』で30代半ばにして“集英社のVIP”になっていた本宮ひろ志本人。「みずから参議院全国区に立候補し、国会議員になるまでをそのままマンガにする」というとんでもなく野心的な企画だった! 井上ひさし、菅直人、田中角栄などに加え、当時の「ジャンプ」編集長(第3代)・西村繁男、第4代編集長となる後藤広喜副編集長、今や集英社社長となった堀内丸恵といった編集者たちも全員実名で登場するのがすごい。「ジャンプ」本体が170円だった82年当時、アラサーだった堀内社長の年収は約700万円。本宮が作中で千葉県市川市の自宅住所を無造作に公開していることも驚く。 現在「グランドジャンプPREMIUM」で連載中の『そしてボクは外道マンになる』は、「ド外道がアア~~~!!」の絶叫で知られる平松伸二の自伝マンガ。この作品が、またすごい! 1974年、すでに「ジャンプ」でデビューしていた早熟の平松は高校を卒業して上京。『ドーベルマン刑事』(原作・武論尊)を連載し、たちまち人気マンガ家となっていく。本宮ひろ志をはじめ実名で登場するマンガ家に対し、編集者は変名になっているが、担当編集者の権藤狂児(後藤広喜)、副編集長の仁死村繁樹(西村繁男)、後に第6代編集長となる魔死利戸毒多(Dr.マシリトこと鳥嶋和彦)など一目瞭然。往年の暴走族のような黒々とした当て字も笑える。 本作で描かれる「ジャンプ」の編集者は全員“外道”で、中でも権藤はひどい。連載に二の足を踏む平松を殴り飛ばし、沖縄出張では「オメエの描く男には色気ってモンがねえんだよオオオ~~~!!」と童貞の平松を強引にトルコ風呂(現ソープランド)に連れていく。ナメた態度に武論尊がブチ切れたエピソードも描き、当時の権藤は「人に対する気遣いが足りないと思った」と告白している。 さらに、本作の「30歳も年下の担当編集」が平松のイベント(漫書展)に花も贈らず、大切な場面で「ネームを打ち忘れやがった!!」ことで編集長に担当を替えてもらったことを明かした上、「だがまだオレの腹の虫は…怒りは収まらねえエエエエ~~~!!」と激白! 編集者をここまでディスったマンガは前代未聞だし、半分ギャグとしてもこれを載せた「グランドジャンプPREMIUM」も太っ腹だ!
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