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C・L・R・ジェームズ「境界を越えて」書評 クリケットで語る植民地の精神

評者: 中村和恵 / 朝⽇新聞掲載:2015年06月07日
境界を越えて 著者:C.L.R.ジェームズ 出版社:月曜社 ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション

ISBN: 9784865030228
発売⽇:
サイズ: 19cm/455p

境界を越えて [著]C・L・R・ジェームズ

 『ブラック・ジャコバン——トゥサン=ルヴェルチュールとハイチ革命』の著者として知られるジェームズの故郷は、カリブ海のイギリス植民地、西インド諸島のトリニダード島。家の窓からはクリケット場が見えた。行商人から買う雑誌や母の本で英文学とクリケット批評に親しみ、学校で古典と英国式規範を教えこまれた黒人少年は、やがて英国を理想とする植民地的価値観に反発、カリブ海の現実を書き始める。文学、歴史、そしてクリケットについて。
 1963年の刊行以来読みつがれてきた本書は、著者の半生、植民地社会の精神構造、教育、人種階級、経済、芸術を、クリケット論として語る。選手ら人物の細かな描写は、英文学の引用を多用しながらも、ユーモアと反骨心に貫かれ、まさにカリブ海文学。クリケットおよびジェームズについては巻末の競技概要、さらにポール・ビュール『革命の芸術家——C・L・R・ジェームズの肖像』も参考になる。
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 本橋哲也訳、月曜社・3240円