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『「家族」難民』書評 行き着く先は年間20万余の孤立死

評者: 水無田気流 / 朝⽇新聞掲載:2014年04月13日
「家族」難民 生涯未婚率25%社会の衝撃 著者:山田 昌弘 出版社:朝日新聞出版 ジャンル:社会・時事・政治・行政

ISBN: 9784023312616
発売⽇: 2014/01/21
サイズ: 20cm/214p

「家族」難民 生涯未婚率25%社会の衝撃 [著]山田昌弘

 「パラサイト・シングル」「婚活」といった流行語を世に送り出し、家族問題を検証してきた筆者による新刊。今回のキーワードは、「難民」と穏やかではない。家族とは「自分を必要とし、大切にしてくれる存在」であり、それは経済的・心理的両面のケアをしてくれる人を意味すると筆者は述べる。それゆえ家族を持てない人や家族の支援が期待できない人の抱える困難は極めて大きい。もはや難民と呼んでいいレベル……というのは、決して誇張ではない。
 これまで日本社会は、家族を標準単位として、社会福祉等の制度を整備してきた。だが周知のように、現在「シングル(単身)」つまり配偶者のいない人が急増している。しかも、その多くが積極的に選択した結果というよりも、望んでも結婚できない人である点が問題だ。とりわけ男性は所得水準が家族関連行動に直結するため、低収入の場合は「結婚しにくい」「離婚しやすい」「再婚しにくい」の三重苦となる。この傾向は、1990年代以降顕著となってきている。
 シングル化の波は、現在広く日本社会を覆っている。この趨勢(すうせい)に沿って、社会保障制度も早急に家族ではなく個人を単位とすべきだが、その場合家族世帯を営む人からの反発も必至だ。世帯のあり方によって、社会が分断される可能性も危惧される。
 家族難民の行き着く先は孤立死だろう。未婚者と孤立死した人の多くが重なっているとすると、今の生涯未婚率(50歳時点未婚)では、25年後に年間20万人以上が孤立死すると筆者は推計する。さらに、家族や社会に包摂されない人の増加から、社会不安の高まりも予期される。離別や死別が新たな難民をもたらす可能性も示唆される。鍵は、シングルであっても難民化しない社会づくりとの指摘は、まさにその通り。家族と社会の関係性を問い直すためにも、ぜひ一読されたい。
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 朝日新聞出版・1728円/やまだ・まさひろ 57年生まれ。中央大学教授(家族社会学)。『近代家族のゆくえ』など。