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與那覇潤「日本人はなぜ存在するか」書評 歴史の見方の「殻」を破る

評者: 原真人 / 朝⽇新聞掲載:2013年12月01日
日本人はなぜ存在するか (知のトレッキング叢書) 著者:與那覇 潤 出版社:集英社インターナショナル ジャンル:社会・時事・政治・行政

ISBN: 9784797672596
発売⽇: 2013/10/25
サイズ: 19cm/189p

日本人はなぜ存在するか [著]與那覇潤

 通説にとらわれない新鮮な日本史観を提示してきた気鋭の歴史学者が、こんども多くの読者が興味をそそられるであろう「日本人とは何か」というテーマに迫った。ありがちな日本人論を想定して読むと、その先入観はことごとくひっくり返されるだろう。
 まずは「集団主義的な日本人」というイメージ、「日本の伝統文化の起源は奈良や京都」といった常識を次々と覆す。それも心理学や社会学、文化人類学などの研究手法をあの手この手で駆使してだ。
 過去に「本当の日本人」を見つけに行っても見つかるわけがない、最初から実在していないのだから、と著者は言う。では“日本人”とは何か。著者が探ろうと試みるのはそれが存在するかのごとく人々を信じさせた「物語」がどうやって生まれたか、だ。
 まるで哲学入門を読んでいる気分にさせられる本だ。そうか、歴史をたどるとは哲学的な作業だったのだ。歴史の見方の殻をまた一つ破ってくれた。與那覇潤、恐るべし。
    ◇
 集英社インターナショナル・1050円