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「迷い迷って渋谷駅」書評 動的にふるまう生物のよう

評者: 福岡伸一 / 朝⽇新聞掲載:2013年05月26日
迷い迷って渋谷駅 日本一の「迷宮ターミナル」の謎を解く 著者:田村 圭介 出版社:光文社 ジャンル:趣味・ホビー

ISBN: 9784334977375
発売⽇:
サイズ: 21cm/265p

現在の渋谷駅がどのようにして出来てきたのか、これからどうなるのかを、渋谷駅に特徴的な谷地形、形態の変化、複雑な内部空間に着目しながら考察。その構造を説明したうえで、「隠さ…

迷い迷って渋谷駅 日本一の「迷宮ターミナル」の謎を解く [著]田村圭介

表参道駅で銀座線から半蔵門線に乗り換えるつもりがうとうとした隙に乗り過ごし、渋谷駅に着いた。さあ大変。表参道駅で隣り合わせだった路線は、渋谷駅ではかたや地上3階(著者によれば4階)、かたや地下3階に入る。渋谷駅は文字通り、すり鉢地形の谷底に位置し、今や九層構造に9路線が立体交差し、一日280万もの人が行き来する一大地下迷宮。最近も副都心線と東横線が連結され、その変容は留(とど)まるところを知らない。それは環境に適応して動的にふるまう生物に似ていると本書はいう。かつて建築運動として喧伝(けんでん)されたメタボリズムの具現は渋谷駅だと。08年、サルが迷い込み、捕獲大作戦が展開されたが、忽然(こつぜん)と姿を消してしまったそうな。まるで小説のようだ。そう、駅が好きな多崎つくるなら、どう読み解いてくれるだろう。建築学者の著者の筆致はちょっとカルト的で、SF的でもあり、図や写真も多数。十分楽しめる都市文化論の好著。私はこういう本が好きだ。
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 光文社・1680円


 

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