古市憲寿「僕たちの前途」書評 モーレツと一線画す起業家たち
評者: 原真人
/ 朝⽇新聞掲載:2013年01月27日

僕たちの前途
著者:古市 憲寿
出版社:講談社
ジャンル:経営・ビジネス
ISBN: 9784062180825
発売⽇:
サイズ: 20cm/333p
僕たちの前途 [著]古市憲寿
今売り出し中の20代の社会学者が語る、現代的な「起業家論」。著者の周囲を行き交う、才能豊かな若き起業家たちがたくさん登場する。そこでリアルに描かれる彼らの素顔や日常に、一昔前の起業家に見られたような、脂ぎったホリエモン的な風情はない。
著者自身も社員3人のITベンチャーの一員だ。もうかっても上場しない。社員も増やさない。同じマンションに住み、行き来自由。会社はファミリーのような存在だ。
起業忌避社会は日本の豊かさの象徴と言い、起業礼賛の風潮に冷めた目を向ける。成功はどれだけトランポリンに恵まれているかにかかるが、昨今、その配分がますます不平等になっているからだ。
著者や登場人物らの人生観は、右肩上がり経済の時代を過ごしてきた中高年の胸にはストンと落ちないかもしれない。巻末にある社長・島耕作(漫画主人公)、田原総一朗氏というモーレツ系2人と、著者との対談は当然かみ合わない。そこがおもしろい。
◇
講談社・1890円