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上野千鶴子『みんな「おひとりさま」』書評 高齢者が安心できる社会こそ

評者: 松永美穂 / 朝⽇新聞掲載:2012年12月16日
みんな「おひとりさま」 著者:上野 千鶴子 出版社:青灯社 ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション

ISBN: 9784862280619
発売⽇: 2012/10/25
サイズ: 19cm/270p

みんな「おひとりさま」 [著]上野千鶴子

 『おひとりさまの老後』『男おひとりさま道』(いずれも法研)に続く、「おひとりさま」についての最新著書。さまざまなメディアに発表された文章が集められていて、著者が人生を振り返る「聞き書き」あり、講演あり、対談ありと、中身は盛りだくさんだ。
 「おひとりさま」前著に対する男性読者の反応や、団塊ジュニア世代の研究者からの反論を受けて書かれた部分もあり、結果的に男女や世代を問わない広い読者層に向けた内容になっている。前著を読んでいない人でも、現代日本が抱える高齢化社会の問題や、著者が提案する「個」を基本とした生き方の心構えについて、たくさんの情報と、考えるきっかけを得ることができるだろう。わたし自身、年金などのいわゆる「世代間格差」について漠然とした不満を抱いていたが、「高齢者にとって安心できる社会保障制度をつくることは、結果的にニート、フリーターにとってもプラス」といった指摘に大いに蒙(もう)を啓(ひら)かれた。
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 青灯社・1470円