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イラク戦巡る米国の暗部暴く

フェア・ゲーム アメリカ国家に裏切られた元CIA女性スパイの告白 著者:ヴァレリー・プレイム・ウィルソン 出版社:ブックマン社 ジャンル:社会・時事・政治・行政

価格:1851円
ISBN: 9784893087614
発売⽇:
サイズ: 19cm/287p

妻はCIA諜報員、夫は元大使。国家に尽くしたはずのこの夫婦はなぜホワイトハウスの敵となったのか?イラク戦争に隠された衝撃の実話。【「BOOK」データベースの商品解説】妻は…

評者:福岡伸一 / 朝⽇新聞掲載:2012年01月08日

フェア・ゲーム―アメリカ国家に裏切られた元CIA女性スパイの告白 [著]ヴァレリー・プレイム・ウィルソン

 私がこの事件に最初に興味を持ったのは、数年前、新聞で見たヴァレリー・プレイムの姿だった。金髪をスカーフで覆い、女優のようなサングラスをしていた。小さな写真だったが硬質の存在感を放っていた。ほんとうに美人スパイがいるのだ。そう思った。
 本書は、彼女自身によるプレイム事件の記録。彼女は米中央情報局(CIA)諜報(ちょうほう)員。時は9・11直後。イラクが隠し持つ大量破壊兵器の証拠をつかもうとしていた。それは好戦的なブッシュ政権が最も求める戦争の大義だった。彼女は仕事の内容を、家族にも友人にも一切話すことができない。
 彼女の夫、ジョセフ・ウィルソンは米国の元駐ガボン大使。政府からの依頼で、現地を調査し、イラクがニジェールからウランを極秘に買い付けている噂(うわさ)を否定する報告をした。しかし2003年3月、ブッシュはイラクへ侵攻。怒ったジョセフはニューヨーク・タイムズに投稿を決意した。「アフリカで私が見つけなかったもの」。開戦の正当性を揺るがしかねないこの動きに政権は過敏、かつ陰湿に反応した。政治コラムニスト、ロバート・ノバクを使い、妻がCIA局員であることを実名暴露した。ジョセフの中立性を失墜させるため。
 美人スパイはたちまちメディアの餌食となり、正義のために行った行為が逆に夫婦を翻弄(ほんろう)し危機を招く。プレイムは幼い双子の母でもある。一方、政権側も無傷ではいられなかった。CIA機密の漏洩(ろうえい)は犯罪である。捜査が始まり、大統領近くにまで迫る。
 当初、私が疑問だったのはリーク記事の筆者、ノバクが逃げおおせたことだったが、一読それも氷解した。各ページ、CIA検閲のため、生々しい墨塗りがある。本書を元にした同名の映画もよい(ナオミ・ワッツとショーン・ペンが本物そっくり)。題名は、“恰好(かっこう)の餌食”の意。米国の暗部を照射した好著。
    ◇
 高山祥子訳、ブックマン社・1800円/Valerie Plame Wilson 63年生まれ。既にCIAは退職。