1. HOME
  2. 書評
  3. 「知の門衛」学術界にも課題

「知の門衛」学術界にも課題

本を生みだす力 学術出版の組織アイデンティティ 著者:佐藤 郁哉 出版社:新曜社 ジャンル:本・読書・出版・全集

価格:5184円
ISBN: 9784788512214
発売⽇:
サイズ: 22cm/568p

学術的知をめぐる物語を生み出す「本」は、どのようにして作られ、世に送り出されるのか? 出版社4社を対象とするケーススタディを通して、学術書の刊行に関わる組織的意思決定の背…

評者:辻篤子 / 朝⽇新聞掲載:2011年04月24日

本を生み出す力―学術出版の組織アイデンティティ [著]佐藤郁哉・芳賀学・山田真茂留


 出版不況は、知の守り手である学術書の出版にも影響を及ぼさずにはいない。
 本書は、東京大学出版会や有斐閣など専門書を出版する4社を例に「知の門衛」としての役割を詳細に分析し、欧米との比較も通して、「学術コミュニケーションの危機」に切り込んでいる。
 ファストフードならぬファスト新書、近年急増する教養系新書にも注目する。出版社は売れ行きが伸び悩む分、刊行点数を増やさざるを得ない。「硬い本」が出やすくなった半面、若手研究者をスポイルする懸念も指摘される。
 そんな新書ブームを支えるのは、欧米とは比較にならないほど厚みのある中間読者層だという。
 一方で、日本の学術界は、日頃から若手に書き方を指導し、仲間の仕事を評価し、知の門衛たらんとする意識が薄いとする。
 本書の分析は、日本独特の文化状況をも浮かび上がらせる。学術のありようにも示唆を与える労作である。
 辻篤子(本社論説委員)
   *
 新曜社・5040円