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「参議院とは何か」書評 役割の理解、深めたい

評者: 中島岳志 / 朝⽇新聞掲載:2010年07月04日
参議院とは何か 1947〜2010 (中公叢書) 著者:竹中 治堅 出版社:中央公論新社 ジャンル:社会・時事・政治・行政

ISBN: 9784120041266
発売⽇:
サイズ: 20cm/378p

参議院とは何か 1947〜2010 [著]竹中治堅著 


 われわれは参議院の役割を、あまり理解していない。なぜ衆議院があるのに、参議院が必要なのか。そもそも二院制に意味があるのか。そんな問いに答えられる人は少ない。
 本書は、参議院が創設された1947年から2010年までの参議院の軌跡を丁寧に追い、その現代的な役割に迫る。
 参議院をめぐっては、その役割を強調する「強い参議院」論と、衆議院の「カーボンコピー」と見なす議論が拮抗(きっこう)してきた。著者は「強い参議院」論を擁護しつつ、安易な参議院不要論を批判する。
 著者が注目するのは、参議院が法案審議過程だけでなく内閣の法案準備段階にまで大きな影響を与えてきた点だ。参議院は立法を慎重なものにし、数を背景とする独断的な政策決定を牽制(けんせい)する。
 内閣は衆議院の信任に依存する一方で、解散権を持っている。それに対して解散がない参議院は、内閣に対する独立性が強い。参議院は内閣と一体化した衆議院の暴走にブレーキをかける役割を果たす。
 参議院選挙前に熟読しておきたい一冊だ。
 中島岳志(北海道大学准教授)
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 中公叢書・2310円