「脱北者」と聞くと、大使館への駆け込みや、非武装地帯を銃撃されながら走る兵士の姿が思い浮かぶが、彼らが脱北に至る経緯やその後の詳細の多くはベールに包まれ、思いをはせることはなかった。
『脱北者たち 北朝鮮から亡命、ビジネスで大成功、奇跡の物語』(駒草出版・1728円)は、韓国社会が息苦しいと日本に来た申美花(しんみふぁ)・茨城キリスト教大教授が、5人の脱北者と支援する牧師らにインタビューした本だ。本書を読むと、脱北者と一口にいっても、北朝鮮を逃れた理由、脱北の途中で遭遇した苦難はそれぞれ異なり、解説を寄せた政治学者、姜尚中氏の言葉を借りれば「泣きもし、笑いもし、涙ぐましい努力を通じて人生の夢を叶(かな)えようとする」一人の人間として立ち現れてくる。
今や脱北者は3万人に上るという。著者は能力と運に恵まれた5人の成功が他の脱北者の励みになってほしいと願うのだが、北朝鮮や脱北者を人身売買する中国などでの体験は非人道的で、脱北者が立ち直るのは容易ではないだろう。(久田貴志子)=朝日新聞2018年7月21日掲載
編集部一押し!
-
信と疑のあいだ のんびり無防備「路地ネコ」 青来有一 青来有一
-
-
一穂ミチの日々漫画 【一穂ミチお薦め】友情を考える漫画特集 それぞれの人生、かけがえのない人間ドラマ 一穂ミチ
-
-
新作映画、もっと楽しむ 映画「未来」黒島結菜さん・北川景子さんインタビュー 湊かなえ原作、絶望に見いだす禁断の光 かわむらあみり
-
人気漫画家インタビュー 「スキップとローファー」高松美咲さんインタビュー 原点は司馬遼太郎作品 メッキが剥がれた先にある人間関係を深く描く 加治佐志津
-
インタビュー 「すしを極める」すし作家・岡田大介さんインタビュー 釣った魚の握りずしから郷土寿司まで、“本当に旨い食べ方”は? 江澤香織
-
コラム 「海をわたる言葉 翻訳家ふたりの往復書簡」中江有里さん書評 出逢いの不思議が生んだもう一つの〝家族〟 PR by 集英社
-
コラム 「海をわたる言葉 翻訳家ふたりの往復書簡」中江有里さん書評 出逢いの不思議が生んだもう一つの〝家族〟 PR by 集英社
-
トピック 【プレゼント】柄谷行人さん最新作「私の謎 柄谷行人回想録」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社
-
インタビュー 平石さなぎさん「ギアをあげて、風を鳴らして」インタビュー 描いてわかった「シスターフッド小説」の魅力 PR by 集英社
-
インタビュー 江國香織さん「外の世界の話を聞かせて」インタビュー 頭の風通し良く、気持ちさっぱり自由になって PR by 集英社
-
インタビュー 【サイン入り本プレゼント】一木けいさん「嵐の中で踊れ」インタビュー 避難所で起きた再生の群像劇 PR by NHK出版
-
インタビュー 湊かなえさん「暁星」インタビュー 作家として「言葉」に向き合い、新たな扉開いた PR by 双葉社