今年は上方落語の復興に力を尽くした桂米朝の生誕100年、没後10年。
本書の第1章は、遺された膨大な資料から生涯をたどる。テレビなどにも出て、全国で独演会を開き、新たなファンを開拓した。高座を活字化した『米朝落語全集』は、上方落語研究の原典だ。
どこまでもきっちりしているが、第2章では門弟らがその素顔を語る。弟子が夜食にラーメンを食べていると、突然現れ「わしにも作ってくれ」と出前一丁の卵のせを満足げに食べた。酒の相手をしてほしい時は弟子に電話して「わし、もうあかんと思うねん」……。
米朝には演者、指導者、研究者という三つの顔がある。巻末の鼎談(ていだん)で話す3人の息子は、長男が落語家(米團治)、次男は高校教師、三男は博物館の学芸員。やはりきっちり受け継がれている。(石田祐樹)=朝日新聞2025年4月19日掲載
