「子どもの貧困」書評 貧困のリアル、再認識する手がかり
評者: 寺尾紗穂
/ 朝⽇新聞掲載:2018年08月04日
子どもの貧困 未来へつなぐためにできること
著者:渡辺 由美子
出版社:水曜社
ジャンル:福祉・介護
ISBN: 9784880654393
発売⽇: 2018/05/25
サイズ: 19cm/181p
子どもの貧困 未来へつなぐためにできること [著]渡辺由美子
「夏休みなんて無ければいいのに」。塾に行けない貧困家庭の子どもの無料学習支援を行うNPOを作った著者は、そう話す子どもたちと向き合っている。困窮家庭の多くはひとり親。ダブルワークで生活をまわす。夏は午後まで寝ていても怒る人もおらず、食事も適当、学校があればバランスのいい給食を食べることもできるがそれもない。夜遅く帰ってくる母親と夕飯を食べる時以外、誰とも話さない子も多い。実態を知ると、勉強することだけでなく、親身になってくれる誰かとつながることこそ、彼らにとって重要なことに思えた。
「早寝・早起き・朝ご飯」は学校の保護者会でもよく聞かされるが、夜遅くまで働く母親にとっては、子どもの睡眠時間を管理することは難しく、恵まれた家庭だけができることだと著者は指摘する。「母親失格」「これだから片親は」と断罪する前に、本書につまった親と子の声を受け止め、貧困のリアルを再認識したい。