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書店員のおしごと、広く伝えたい! 村山早紀さん「桜風堂ものがたり」続編刊行

文:根津香菜子、写真:御堂義乗

 「前作では枚数が多くなってしまって、お客様の視点を入れる余裕がなかったんです。今の書店の苦しい状況と、それに対して書店員さんたちがどういう風に立ち向かっているかは書けたんですけど。そこから先、どういう風に救われていくべきか、読者ができることはないかを書かなきゃと思って」

 これまでも自身のTwitterやあとがきで、書店や書店員さんへの熱い思いを綴っている村山さん。そんな「書店」を、なぜ作品の舞台に選んだのだろうか。そのベースにあったのは、子供のころの書店と本への思い入れだという。

 「親の仕事の都合で転校が多かったので、人よりも本の世界とのつながりを持つようになったんです。数か月から1年くらい各地を転々として、その街に行くと本屋さんを探して。“私の居場所がここにある”と思っていました。私、昭和38年生まれなんですけど、そのころの娯楽っていうと、本を読むことくらいでしたから、そういう世代に育ったことがベースにあって、小学1年生の頃には、もう作家になるつもりでした」

 そのころのままの気持ちで成長し、大学時代からコンテストに応募して児童文学の賞を受賞。プロの作家になると、新刊が出るたび書店にあいさつ回りに行くようになり、書店員とも話すようになり、交流が増えた。

書店員からプレゼントされた手作りの猫の人形を見せてくれた村山さん

 「書店員さんの仕事って外からは分からないじゃないですか。この人たちは1日どういうことをしているんだろう?って。実際自分がプロになってお店に行き、書店員さんと仲良くなって、TwitterなどのSNSで繋がり、仕事の大変さやおもしろさがわかってきて。すごくおもしろいんですよ。大変だけど、こんなに素敵でロマンチックなお仕事がある。そのことを一般の人は知らないでしょう。

 もともと私、児童文学者なので、社会派寄りなんです。世の中に対して訴えかけるものを自分が書くことによって、良い方向に変えていこうって。それがベースにすごくあるんです。書店員さんたちの気持ちとか、万引きがどれだけ店に被害を与えるのかとか。そういうのを書かなきゃいけないんじゃないかっていう使命感が沸き上がったんです」

 書店を題材にしたノンフィクションを何冊も読み、書店員に実際に話を聞いたりして書き上げた。そうして出来上がった『桜風堂ものがたり』は、物語と同じように多くの書店員から支持を得て、2017年本屋大賞5位を受賞。この作品が本になったことで、今までやり取りのなかった書店さんともつながって輪もさらに広がった。

 「この話を書くことで、書店員さんってこんな仕事しているんだっていう、仕事への理解が深まると思いました。創造と理解のベースみたいなものが物語によって世の中に発信していくことができる。そこにドラマチックな要素を足した物語なら、私、書ける!って(笑)。“実際はこんなもんじゃない”っていう人もいるけれど、それでも“気持ちを汲み取ってくれた”と言ってもらって書いてよかったと思うし、書店員さんってこんな仕事しているんだって、理解が深まったのが嬉しかったです」

 人をつなげることもあれば、いわれなき理不尽な悪口も垣間見える時がある。自身も早くからTwitterをはじめているが、今のインターネット社会の在り方について問うと、「私は基本的に善良なものと信じたいです。思いが時に暴走する場所でもあることはわかっているので、前作のほうでは一整の辛い経験も書き、でもブログで救われる彼もいて。今作では、救いの手がこういう風に世の中を明るいほうに変えていくことができるんだって。SNSの光と影の対比を描きましたが、未来ってどこか一歩でも明るいほうに向かっているんですよ」。

サインは「かわいい方が飾ってくださるお店も楽しいのではないかと思って」いつも猫の絵を添えるという

 今作では、今まで一度もサイン会を開いたことがない桜風堂に作家が自ら出向いてサイン本を置いたり、廃校で合同のサイン会を行ったり…。田舎の小さな書店に、作家と住民がつながる場が生まれる。何万部と刷られた本も、作者にサインを書いてもらった本は、とたんに「自分だけの1冊」になる(と個人的に思っている)。村山さんはデビューのころから何度もサイン会を行ってきた。その理由とは――。

 「以前、寝屋川の小さな書店で働いていた若い女性店員さんが私の本を推してくれて、店にある本全部にサインを書いてほしいと頼まれたんです。サイン本になると返品できなくなるんですが、“大丈夫です。私がどんなに時間をかけても売りますから、サインを書いてください”って。実は彼女は主人公のモデルの1人でもあるんですが、彼女は店にサイン本を置くことで、お客様が喜ぶから置きたいって。みなさん、いかに自分のお店のお客様に喜んでもらえるかに、心を砕いてる人たちなんですよ。私にとってサイン会は、読者と書店さんへのサービスです。喜んでくれるから続けてきただけ」

 また、このシリーズでも登場する、村山作品ではおなじみの「風早の街」は、自身が中学の2年間を過ごした千葉の市川がモデルになっているそう。その街にある書店やコンビニなどで少し不思議なことが起こって、読後は温かな気持ちになる、というのが村山作品の常だが、中には戦争を取り入れた話も少なくない。

 「論理的に筋道を立てて、なおかつハッピーエンドっていうのが好きなんです。でも、悲しいからこそ心に残って、世の中を変革していこうっていうのは間違っていなくて。松谷みよ子さんの『ふたりのイーダ』や『死の国からのバトン』はどちらも悲しいし、救われないことも多いんですよ。だけど、だからこそ心の中に生き続けて、これはなんとかならなかったのか、あるいは、自分は何ができるのかってバトンをつなぐような心に残る物語って大事。私は味付けが若干甘口なので、味わいやすい作品の構成にするけど、完全に甘いだけの夢物語にはしたくないんです」

 最後に「風早の街には、これからも住人やお店が増えそうですか?」と尋ねると、「ちょこちょこ増えていくかな? 街なのでね、まだ色々書けるかと。このお話も完結させたつもりだけど、重たい話がいったん終わったので、楽しい番外編みたいなものを描きたいですね」と柔らかな微笑みを浮かべた。