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歴史地理学、牽引役をしのぶ 木本雅康さんの功績、研究者ら語る

 地理学の方法論を歴史に応用(その逆も)する「歴史地理学」。その牽引(けんいん)役のひとりで、1月に54歳で亡くなった長崎外国語大教授の木本雅康さんをしのぶ会が先月、古代交通研究会などの呼びかけで東京都内で開催された。人柄のみならず、研究史上における位置づけにまで言及・総括するという、いかにも学者らしい追悼の集いとなった。

 木本さんは国学院大大学院博士課程単位取得満期退学。学部では古代の歴史地理を、大学院では宮沢賢治の文学を学んだ異色の研究者で、長崎外国語大着任後は、駅路や伝路の研究に力を注いだ。成果は『古代官道の歴史地理』(2011年、同成社)、『日本古代の駅路と伝路』(18年、同)などに詳しい。

 木本さんの研究の特色として、考古学の成果を積極的に採り入れ、文献をつきあわせて古代の官道の比定を積極的に行ってきた点があげられる。「現地に足を運び、事例をこつこつと積み上げる地道な学者だった」と卒業論文を指導した鈴木靖民・国学院大名誉教授は振り返る。

 専門分化の進む現代、歴史地理学のような境界領域を学ぶ研究者は育ちにくい。50代という若さでの死が惜しまれる。(編集委員・宮代栄一)=朝日新聞2018年8月15日掲載