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新書ピックアップ(朝日新聞2018年8月18日掲載)

『保守と大東亜戦争』

 保守思想にひかれた若き日から著者が違和感を持っていた、保守=大東亜戦争肯定の図式。戦前・戦中を経験した保守の論客は、軍国主義的風潮に批判的で、大東亜戦争に懐疑的だった、という。理想を掲げる急進的な超国家主義はむしろ「革新」であり、保守思想とは相いれないものだからだ。竹山道雄や田中美知太郎、福田恆存、山本七平らの著作と、その思想を形成した経験を読み解く。
★中島岳志著 集英社新書・972円

『アンネ・フランクに会いに行く』

 ナチによるユダヤ人迫害の歴史の中に、収容所で15年の生涯を閉じた少女が隠れ家で記した日記が残された。平和を脅かす力がいまだに横行する21世紀の視点から、ナチの存在、密告、収容所の生活、そして生還したアンネの父親の心境などをつづる。アンネ一家の足跡をたどる旅を通して探り、平和の意味を考える。
★谷口長世著 岩波ジュニア新書・972円

『科学者はなぜ神を信じるのか』

 理論物理学者の著者は、科学者たちの宇宙への探究を通して、「神」の存在と科学の関係性に注目する。コペルニクスやガリレオ、ニュートンを経て、絶対的な神の領域だった天体の運動は相対化され、いまやホーキングなど宇宙の始まりも科学的理論で解釈される。しかし、本当の始まりは誰が作ったのか。神を理解しようとすることで無力と無知を知る。科学と神は矛盾しない、と訴える。
★三田一郎著 ブルーバックス・1080円

『日本思想史の名著30』

 戦後の丸山眞男が日本思想の「古層」を見た『古事記』。佐賀藩で読まれていた『葉隠』が武士道を体現する古典となったのは、戦時期のブームから。「日本国憲法」は、9条のみならず国民主権についても制定当時の政府と法学者の解釈が微妙に異なる。古代から昭和戦後期まで、30点の古典を研究史も踏まえつつ解説し、現代的意味を読む。
★苅部直著 ちくま新書・929円