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言葉は歌から生まれた? 「言葉と音楽の深い関係を考えるヒントになる」本

 今回紹介する本にもある通り、言葉は歌から発生したという説があります。音楽と言葉は強い血縁関係で結ばれているけれど、音楽は主に感情に訴えかけ、言葉は理性に訴えかけるように発達してきました。似ているようでいて相反する関係ゆえに、互いに影響を与え合い、さまざまな果実を産み落としてきたことがわかる本をピックアップしました。

  1. 「音楽と言語」T.G.ゲオルギアーデス(講談社学術文庫)
  2. 「武満徹著作集 4」武満徹(新潮社)
  3. 「音楽の聴き方 聴く型と趣味を語る言葉」岡田暁生(中公新書)
  4. 「言葉の誕生を科学する」小川洋子、岡ノ谷一夫(河出文庫)
  5. 「ヒップホップの詩人たち」都築響一(新潮社)

(1)「音楽と言語」
 西洋音楽の歴史を、言語と音楽との影響関係の歴史としてひも解いたユニークな一冊です。本書の主軸となるのは、千年以上にわたってキリスト教会で歌われてきたミサ曲の発達史。言語(本書では主にドイツ語)の影響を受けながら曲が複雑化(言語化)し、バッハで頂点を迎えるまでの過程が、具体例豊富に描かれています。

(2)「武満徹著作集 4」
 本書所収「音・ことば・人間」は、音楽家・武満徹と文化人類学者・川田順造との往復書簡です。川田氏の研究対象であるモシ族は、文字をもっていません。代わりになんと彼らは、太鼓を叩き分けることによってメッセージを伝えるのだとか。「音楽=無意味」「言語=意味」という私たちの偏見を、根本から転覆させてくれる一冊です。 

(3)「音楽の聴き方 聴く型と趣味を語る言葉」
 本書では、聴いた音楽を言葉にしてみることを勧めています。そうすることで、自分がどんなフィルターを通してその音楽を聴いているのかが見えてくると著者はいいます。またそれによって自分のそれまでの聴き方が相対化され、音楽の新たな楽しみ方をも発見できるかもしれません。言葉を介して、音楽をより豊かにするための試みといえるでしょう。

(4)「言葉の誕生を科学する」
 作家・小川洋子と動物行動学者・岡ノ谷一夫の知的刺激に満ちた対談本です。言葉の誕生は異性の気を惹くための歌にある?岡ノ谷氏は鳥のさえずりやクジラの鳴き声に、言葉の発生を知るための手がかりがあると見ています。だとすれば、人間以外の動物も言語に似た伝達手段を用いているということなのか……興味は尽きません。

(5)「ヒップホップの詩人たち」
 編集者・都築響一が全国のクラブに通い詰め、地方在住のラッパーたちにインタビューし、彼らのリリックを採集しました。リズムに乗せてとめどなく言葉を繰り出すラップ。彼らはなぜ詩でも歌でもなく、ラップで日本語を口ずさむのか?それぞれのラップとの出会いや、その表現の圧倒的な魅力が語られています。