1. HOME
  2. コラム
  3. 選書往還
  4. 意外な著者にも驚く! 大人が楽しめるアーティストの絵本

意外な著者にも驚く! 大人が楽しめるアーティストの絵本

 絵本は子どもが読むもの、という思い込みを心地よく覆してくれるのが、ミュージシャンやデザイナーなどのアーティストがつくった絵本です。磨き抜かれた文章に作品のようなイラスト。奇想天外な発想に刺激を与えられたり、大切な人への想いにキュンとしたり。そんな大人だからこそわかる心に響く本たちは、ブックライフを素敵に彩ってくれます。

  1. 「アイスクリームが溶けてしまう前に 家族のハロウィーンのための連作」(小沢健二と日米恐怖学会、福音館書店)
  2. 「アンディ・ウォーホルのヘビのおはなし」(アンディ・ウォーホル、河出書房新社)
  3. 「おてんばルル ソフトカバー版」(イヴ・サンローラン、河出書房新社)
  4. 「えほん・どうぶつ図鑑」(横尾忠則・絵、穂村弘・文、芸術新聞社)
  5. 「はじまりの日」(ボブ・ディラン・作、ポール・ロジャース・絵、小学館)

(1)「アイスクリームが溶けてしまう前に 家族のハロウィーンのための連作」
 ハロウィンの夜、アメリカに来たばかりの女性の家に現れたのは、青トンボに扮した4人家族でした。子どもみたいにはしゃぐ親に、いつか遠くの街でその日のことを思い出す息子。本場のハロウィンは家族で楽しむもの。ハロウィンの歴史を通して家族のかけがえのない時間を描いた、著者の音楽同様、楽しさと切なさで一杯の物語です。

(2)「アンディ・ウォーホルのヘビのおはなし」
 ウォーホルの眩しいくらいにポップで色鮮やかな絵本です。上流社会が大好きな一匹のヘビが、クレオパトラからココ・シャネルまで、歴代セレブたちのアクセサリーや洋服に七変化する不思議なお話。自由闊達なイラストは、楽しみながら描いているウォーホルの姿が浮かんでくるようで、眺めているだけで楽しめます。

(3)「おてんばルル ソフトカバー版」
 作者はファッションデザイナーのイブ・サンローラン。おしゃれな太っちょ少女のルルが、度を越えたおてんばぶりで騒動を巻き起こします。学校の先生を「ヒステリー女!メスザル!」と罵ったり、ダイナマイトで列車を爆破したり。でもまったく反省の色はなし。おしゃれな内容を期待して手に取ると、度肝を抜かれます。

(4)「えほん・どうぶつ図鑑」
 『私を切り抜いて下さい。あなたの鋏で』。画家・横尾忠則が絵を、歌人・穂村弘が文を手がけた絵本は、読者がページを切り抜くことで完成する驚きの一冊です。各ページに描かれた動物を点線にそって切り抜いていくと、やがて本全体が幻想的なコラージュ作品に。読者の創造力をも刺激する、アーティストならではの絵本です。

(5)「はじまりの日」
 ボブ・ディランが息子に捧げた曲「フォーエバー・ヤング」をもとにつくった絵本。『毎日がきみのはじまりの日』。ノーベル文学賞詩人の、そんなシンプルながら希望に満ちた温かい言葉が心に響きます。イラストにはビートルズをはじめ、ディランに影響を与えたミュージシャンたちが登場。大人のロックファンにはたまらない一冊です。