11月上旬、シャルージャ国際ブックフェアに招待され、UAE(アラブ首長国連邦)へ行ってきました。
ブックフェアでは、トークイベントの他、学校訪問も2校、プログラムに組み込んでもらいました。その1校目は、ドバイの高台にある女子高です。英語、アラビア語が堪能な日本人男性通訳の方にご同行いただいたので、特に緊張感もなく訪れたのですが、控室に通されてしばらく経ってから、男性は遠慮してほしいと伝えられました。イスラム教の国。王族の子どもも通う由緒正しい学校です。ここは従うしかありません。
通訳なし。生徒たちに英語は通じる。頑張れ、どうにかなる。トンガの学校で授業をしていた頃を思い出せ!
担当の先生に案内されながら、自分を励ますものの、トンガも20年前の出来事です。低レベルな語学力で、意思の疎通はできるのか……。
図書室に通されると、10人くらいの生徒がいました。これくらいの人数なら何とかなりそうです。自己紹介の後、小説家になる前は先生をしていましたと話し、子どもたちに将来の夢を聞いてみます。ドクター、アーティスト、アーミー、勢いのよい返答に嬉(うれ)しくなりました。
次に、本について尋ねたところ、残念ながら、日本の小説は読んだことがないとのこと。しかし、一人の生徒がカバンから漫画を取り出してくれました。「黒執事」です。私も読んでいたので、互いに好きな登場人物を言い合い、他の子たちにも好きな漫画を尋ね、楽しいひとときを過ごすことができました。最後に自分の作品をすすめて、お別れです。
ブックフェアの会場でも、『告白』の英語版にサインを求めてきた女性と、なぜか「進撃の巨人」の話で盛り上がり、漫画やアニメは最強のコミュニケーションツールだなと感心しながらも、少し敗北感……。いつか、宗教や文化の違う人たちが、私の作品を通じて仲良くなる光景を見てみたいと夢想しながら、帰国の途につきました。=朝日新聞2018年10月29日掲載
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